フッ素入り歯磨き粉の選び方と効果|年齢別の濃度・使い方と虫歯を防ぐ仕組み

フッ素入り歯磨き粉は、虫歯予防に効果があることが多くの研究で確認されています。日本では、6歳以上の子どもから大人・高齢者まで、1400〜1500ppmFの歯磨き粉が推奨されています。

虫歯予防効果を十分に生かすには、年齢に合った濃度と量を選び、就寝前を含めて1日2回磨きます。歯磨き後は軽く吐き出し、うがいをする場合は少量の水で1回にとどめます。

フッ素入り歯磨き粉の選び方と使い方に加え、フッ素が歯のミネラルや結晶にどう働くのか、海外ではどのように使用されているのかも紹介します。

目次

フッ素入り歯磨き粉の濃度と選び方

フッ素入り歯磨き粉を選ぶときは、まず年齢に合ったフッ素濃度を確認します。

パッケージに記載されている「950ppmF」「1450ppmF」などの数字は、歯磨き粉に含まれるフッ化物イオンの濃度を表しています。1450ppmFなら、歯磨き粉1kgあたりにフッ化物イオンが1450mg含まれるという意味です。

年齢別の推奨濃度と使用量

日本口腔衛生学会、日本小児歯科学会、日本歯科保存学会、日本老年歯科医学会の4学会は、2023年4月に公表した提言の普及版で、次の使用方法を推奨しています。

年齢推奨フッ素濃度1回の使用量
歯が生えてから2歳900〜1000ppmF米粒程度(1〜2mm)
3〜5歳900〜1000ppmFグリーンピース程度(約5mm)
6歳以上(大人・高齢者を含む)1400〜1500ppmF歯ブラシ全体(1.5〜2cm程度)

出典:歯科関連4学会「フッ化物配合歯磨剤の推奨される利用方法(2023年版・普及版)」

国内の市販品では950ppmFと1450ppmFの製品が多いため、5歳までは950ppmF前後、6歳以上は1450ppmF前後を目安にすると分かりやすいでしょう。

6歳以上の子どもは、体格や口の大きさに合わせて使用量を調整します。また、製品に記載されている対象年齢や使用上の注意も確認してください。

500ppmの子ども用歯磨き粉を使っている場合

以前は、小さな子どもには500ppmF程度の歯磨き粉が推奨されていました。しかし、現在の国内推奨濃度は900〜1000ppmFに引き上げられています。

日本小児歯科学会は、この変更について、1000ppmF未満の歯磨き粉では虫歯予防効果を十分に確認できないという研究結果などを理由に挙げています。

2010年のコクランレビューでも、子ども・若年者の永久歯を中心とした研究では、1000ppmF以上の歯磨き粉に虫歯予防効果が認められた一方、440〜550ppmF程度以下では、フッ素を含まない歯磨き粉との差が統計的に明確ではありませんでした。

ただし、低濃度の製品に効果がまったくないと断定する結果ではなく、乳歯に関する研究には不確実性もあります。

現在500ppmFや100ppmFの子ども用歯磨き粉を使っている場合は、年齢に合わせて950ppmF前後の製品への切り替えを検討するとよいでしょう。飲み込みが心配な小さな子どもには、推奨された少量を保護者が出して使用します。

フッ素濃度と製品表示の確認方法

歯磨き粉のパッケージでは、「フッ素1450ppm配合」「フッ素950ppm配合」などの表示を探します。外箱やチューブの裏面、製品説明欄などに記載されていることがあります。

フッ素濃度が表示されていない場合は、メーカー公式サイトの製品情報を確認してください。

成分表示では、主に次の名称が使われます。

  • フッ化ナトリウム(NaF)
  • モノフルオロリン酸ナトリウム(MFP)
  • フッ化第一スズ(SnF₂)

いずれも虫歯予防に使用されるフッ化物です。配合成分によってフッ素の供給方法やほかの作用に違いはありますが、一般的な虫歯予防では、まず年齢に合ったフッ素濃度と使い続けやすさを確認するとよいでしょう。

ペースト、ジェル、泡などのタイプがあり、ジェルだから必ずフッ素濃度が高いというわけではありません。ミントが苦手なら低刺激タイプ、泡立ちが気になるなら低発泡タイプなど、磨きやすさも選択基準になります。

日本の薬用歯磨き粉に配合できるフッ化物イオン濃度の上限は1500ppmFで、市販品では1450ppmF程度までのものが広く販売されています。

フッ素の効果を高める歯磨きの方法

フッ素入り歯磨き粉の予防効果は、濃度に加えて使い方にも左右されます。

特に、歯磨きの頻度と使用量、歯磨き後のすすぎ方が関係します。

就寝前を含めて1日2回の歯磨き

日本の歯科関連4学会は、就寝前を含む1日2回の歯磨きを推奨しています。

睡眠中は唾液の分泌量が減り、酸を中和したり、歯にミネラルを補給したりする働きが弱くなります。そのため、就寝前には歯垢を丁寧に落とし、フッ素入り歯磨き粉を歯全体に行き渡らせるとよいでしょう。

フッ素入り歯磨き粉を使用すると、フッ化物が歯垢や歯の表面に取り込まれ、唾液中の濃度も上昇します。米国歯科医師会(ADA)によると、唾液中のフッ化物濃度は歯磨き後に大きく上昇しますが、通常1〜2時間程度で元の水準に近づきます。

毎日の歯磨きで繰り返しフッ素を供給することが、虫歯予防につながります。

歯磨き後のすすぎは少量の水で1回

歯磨き後に何度も口をすすぐと、口の中に残るフッ化物が洗い流されてしまいます。

4学会の推奨では、3歳以上は歯磨き粉を軽く吐き出し、うがいをする場合は少量の水で1回だけとされています。

水の量は10mL程度が一つの目安です。日本歯科医師会が紹介する歯磨き方法でも、約10mLの水が使われています。ただし、その方法は歯磨き粉を吐き出す前に水を含む手順であり、4学会が示す基本的な方法とは順序が異なります。

例えば、歯磨き後にコップ1杯の水で何度もすすいでいる場合は、少量の水で1回だけに変えると、フッ化物を口の中に残しやすくなります。

英国では、歯磨き粉を吐き出した後、水ですすがない方法が推奨されています。

甘い飲食物の頻度にも注意

フッ素入り歯磨き粉を使っていても、糖を含む飲食物を頻繁に取ると、歯の表面からミネラルが溶け出す機会が増えます。

例えば、甘い飲み物を長時間少しずつ飲み続けると、口の中の細菌が繰り返し酸をつくり、歯が酸性の環境にさらされやすくなります。

飲食の間隔が空くと、唾液の働きで口の中の酸性状態が回復し、歯のミネラルを補う時間が生まれます。

また、歯と歯の間に残った歯垢は歯ブラシだけでは十分に除去できないため、デンタルフロスや歯間ブラシの併用も有効です。

子どものフッ素入り歯磨き粉と安全性

フッ素入り歯磨き粉は、乳歯が生え始めた時期から使えます。子どもでは歯磨き粉を飲み込む可能性があるため、年齢別の濃度と使用量を守ることが必要です。

歯が生えてから2歳までは米粒程度(1〜2mm)を使い、保護者が歯磨きをします。うがいができない場合は、歯磨き後にティッシュなどで軽く拭き取っても構いません。

3〜5歳ではグリーンピース程度(約5mm)を目安にします。自分で適切な量を出せない間は、保護者が歯磨き粉をつけてください。

フッ素症と飲み込みへの注意

フッ化物を歯の形成期に長期間過剰摂取すると、永久歯に白い線や斑点などが現れる「歯のフッ素症」の原因になることがあります。

歯のフッ素症は、エナメル質が形成されている時期に起こる変化です。すでに生えている歯に、後から歯磨き粉を使用したことで新たに歯のフッ素症が発生することはありません。

歯磨き粉は子どもの手の届かない場所に保管し、チューブから直接なめたり、大量に飲み込んだりしないようにします。

もし大量に飲み込んでしまい、受診や応急手当の判断に迷った場合は、日本中毒情報センターの中毒110番に相談できます。

  • 大阪中毒110番:072-727-2499
  • つくば中毒110番:029-852-9999

いずれも一般向け、365日24時間対応、情報提供料は無料です。強い症状がある場合は速やかに救急医療を利用してください。

適切な濃度と量で使用するフッ素入り歯磨き粉は、虫歯予防における安全性と有効性が確認されています。

フッ素が虫歯を防ぐ化学的な仕組み

フッ素は、歯が酸によって溶けるのを抑え、唾液による修復を助けます。

この働きは、歯のエナメル質を構成する結晶と、口の中で起こる化学的な変化から理解できます。

虫歯は歯のミネラルが溶け出すことで始まる

歯の表面を覆うエナメル質は、主に「ハイドロキシアパタイト」と呼ばれる結晶でできています。

化学式は次のとおりです。

Ca₁₀(PO₄)₆(OH)₂

カルシウムとリン酸を主成分とする硬い結晶ですが、酸性の環境では溶けやすくなる性質があります。

口の中の細菌が糖を利用して酸をつくり、歯垢中のpHが低下すると、エナメル質からカルシウムやリン酸が溶け出します。この現象を「脱灰(だっかい)」と呼びます。

一方、唾液にはカルシウムやリン酸が含まれています。酸性状態が回復すると、これらのミネラルが歯に戻り、結晶が修復されます。これが「再石灰化」です。

健康な口の中でも、脱灰と再石灰化は毎日繰り返されています。虫歯は、このバランスが崩れ、歯のミネラルが失われ続けることで進行します。

フッ素が脱灰を抑え再石灰化を助ける理由

フッ素入り歯磨き粉から供給されたフッ化物イオン(F⁻)は、唾液や歯垢の中、歯の表面などに存在します。

フッ化物イオンが歯の周囲にあると、酸によるハイドロキシアパタイトの溶解が抑えられます。また、唾液中のカルシウムやリン酸が再び歯に取り込まれるのを助け、再石灰化を促進します。

このとき、歯の表層ではフッ素を含む、酸に溶けにくい結晶が形成されることがあります。

フッ素を含む結晶として知られているのが「フルオロアパタイト」です。

ハイドロキシアパタイト

Ca₁₀(PO₄)₆(OH)₂

フルオロアパタイト

Ca₁₀(PO₄)₆F₂

化学式では、水酸基(OH⁻)がフッ化物イオン(F⁻)に置き換わった形になります。

フルオロアパタイトは、ハイドロキシアパタイトより酸に溶けにくい性質を持っています。

ただし、通常のフッ素入り歯磨き粉によってエナメル質全体がフルオロアパタイトに変わるわけではありません。歯に取り込まれるフッ素は主に表層の限られた範囲であり、この結晶の変化が実際の虫歯予防効果にどの程度寄与するかについては議論があります。

現在は、歯の周囲に存在する低濃度のフッ化物イオンが、脱灰を抑え、再石灰化を促す作用が中心と考えられています。

フッ素には歯垢中の細菌の代謝に影響し、酸の産生を抑える作用も報告されていますが、通常の歯磨き粉による虫歯予防では、ミネラルの溶解と再形成への作用が主な働きです。

フッ素による臨界pHの違い

フッ素が歯を酸に強くする性質は、「臨界pH」という数値からも説明できます。

臨界pHとは、周囲の液体が歯のミネラルに対して飽和している状態と、溶け出しやすい状態との境界になるpHです。

代表的な結晶の臨界pHは、次のように説明されています。

結晶臨界pHの目安
ハイドロキシアパタイト約5.5
フルオロアパタイト約4.5

pHは数値が低いほど酸性が強くなります。フルオロアパタイトは、より酸性の強い環境でも溶けにくい結晶です。

例えばpH5.0程度の環境では、溶液中のミネラル濃度などの条件によって、ハイドロキシアパタイトは溶ける一方、フルオロアパタイトは安定して存在したり、析出したりすることがあります。

ただし、臨界pHは一定の数値ではなく、唾液や歯垢中のカルシウム・リン酸濃度などによって変化します。フッ素入り歯磨き粉を使った歯全体の臨界pHが、一律に4.5へ変化するという意味ではありません。

フッ素はこうした歯の表面と周囲の液体の化学的なバランスに働き、虫歯の発生や進行を抑えるのです。

フッ素入り歯磨き粉の予防効果

厚生労働省のe-ヘルスネットでは、フッ化物配合歯磨剤について、虫歯になった歯・虫歯で失われた歯・治療した歯の面数を表すDMFSなどを指標とした研究で、概ね24%の虫歯予防効果が報告されています。

これはフッ素を含まない歯磨き粉などの対照と比較した、研究集団における平均的な虫歯増加量の減少を表しています。すべての人の虫歯になる確率が24%下がるという意味ではありません。

また、1000ppmF以上の範囲では、濃度が500ppmF上がるごとに予防効果が約6%高まるという研究結果も紹介されています。

フッ素は、穴が開く前の初期虫歯では再石灰化を助け、進行を抑える働きが期待できます。一方、すでに穴が開いた虫歯は歯磨き粉だけで元の形に戻せません。気になる変色や穴がある場合は、歯科医院で確認してもらいましょう。

日本と海外のフッ素入り歯磨き粉の違い

フッ素入り歯磨き粉は、日本だけでなく英国や米国などでも虫歯予防の基本的な方法として推奨されています。

ただし、年齢別の濃度や使用量、すすぎ方には違いがあります。

日本と英国の推奨濃度

英国の国民保健サービス(NHS)は、子ども向けのフッ素入り歯磨き粉について、次のように案内しています。

英国の年齢区分日本の推奨英国NHSの推奨
3歳未満歯が生えてから2歳は900〜1000ppmF1000ppmF以上
3〜6歳3〜5歳は900〜1000ppmF、6歳は1400〜1500ppmF1000〜1500ppmF
7歳以上1400〜1500ppmF1350〜1500ppmF

出典:日本の4学会合同提言、英国NHS「Children’s teeth」。2026年10月確認。

日本と英国では、2歳以下と7歳以上の推奨濃度はおおむね近く、主な違いは3〜6歳の基準にあります。

使用量については、英国では3歳未満は米粒程度、3〜6歳はグリーンピース程度とされています。

日本では6歳から歯ブラシ全体(1.5〜2cm程度)が目安となりますが、英国では6歳までグリーンピース程度の量を勧めています。

また、英国では歯磨き後に歯磨き粉を吐き出し、水ですすがない方法が推奨されています。

米国の推奨とフッ素の利用方法

米国歯科医師会(ADA)も、最初の乳歯が生えた時期からフッ素入り歯磨き粉を使うことを推奨しています。

使用量は3歳未満で米粒程度、3〜6歳でグリーンピース程度です。市販製品の濃度や規制は日本と異なるため、海外製品を購入するときは対象年齢や使用上の注意を確認する必要があります。

また、米国の一部地域では、水道水中のフッ化物濃度を虫歯予防に適した水準に調整する「水道水フロリデーション」が行われています。

日本では水道水フロリデーションは一般的に実施されておらず、フッ素入り歯磨き粉、歯科医院でのフッ化物塗布、フッ化物洗口などが主な利用方法です。

海外でもフッ素による虫歯予防は広く行われていますが、推奨される年齢区分や使用環境には違いがあります。日本で歯磨き粉を使用する場合は、国内の4学会合同提言を基本にするとよいでしょう。


参考資料

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