文章力を上げる方法|書くときの5つの基本と2つの練習

メールを書いたのに意図がうまく伝わらない。文章を読み返すと長く感じるのに、どこを削ればよいのか分からない。本を読んだり文章術を学んだりしても、自分の文章になると迷ってしまうことがあります。

文章力を上げるために、難しい言葉や特別な表現を最初に覚える必要はありません。優先したいのは、誰に何を伝えるのかを整理してから書き、書いた文章を読み手の視点で直すことです。

文章力は書いている瞬間だけの能力ではありません。書く前の設計と、書いた後の編集まで含めて練習すると、どこを改善すればよいかが見えやすくなります。

この記事のポイント
  • 文章力は語彙力だけでは決まらない
  • 読み手と目的から逆算して文章を設計する
  • 書く量だけでなく直す経験を増やす
目次

文章力を上げるには設計力と編集力を鍛える

文章がうまいというと、豊富な語彙や気の利いた表現を思い浮かべるかもしれません。しかし、仕事のメールや資料、ブログ、説明文で求められるのは、読み手が余計な推測や読み返しをせず、必要な内容を理解できることです。

文化庁「公用文作成の考え方」でも、公用文を読み手とのコミュニケーションとして捉え、文書の目的や種類、想定される読み手に応じて書き方を工夫する考え方が示されています。

文章力をこの視点から考えると、単に文を書く能力ではなく、次の4つに整理できます。

要素何をする力かうまくいかないと読み手はどうなるか
読み手と目的誰に何を伝えるか決める何が重要なのか分かりにくくなる
情報量必要な情報を選ぶ不足した前提を推測したり不要な情報を探し分けたりする
情報構造理解しやすい順番に並べる話のつながりを確認するために読み返す
文と編集文や段落を整えて直す曖昧な意味や文同士の関係を推測しながら読む

徳島大学高等教育研究センター「文章力を身につけよう」でも、文章表現だけではなく、情報の収集・分析、読解・要約、構成などを文章作成に関わる力として扱っています。

文章が苦手だからといって、日本語そのものが苦手とは限りません。頭に浮かんだことをそのまま文章にしようとして、読み手や情報の整理を飛ばしている場合もあります。

文章力を上げるなら、語彙を増やす前に、設計する→書く→編集するという一連の流れを整えるところから始めると実践しやすくなります。

文章力を上げる5つの基本

文章を書くときに意識したいことは数多くあります。ただし、すべてを同時に直そうとすると、何が文章を分かりにくくしているのか見えにくくなります。

優先したいのは、文章が作られる順番に沿って改善することです。

STEP
読み手と目的を決める

書き始める前に、誰が読むのか、読んだあと何を理解・判断・行動してほしいのかを決めます。

同じ会議の日程変更でも、事情を知っている同僚への連絡と、初めてやり取りする取引先へのメールでは必要な説明が違います。

書き手には当たり前の前提でも、読み手が知っているとは限りません。反対に、相手がすでに知っていることを最初から長く説明すれば、本当に必要な情報が埋もれます。

文化庁も、広く一般に向けた文章では読み手に理解されることを意識し、文書の目的や想定される読み手に応じて書き方を工夫する考え方を示しています(文化庁「公用文作成の考え方」)。

○○について知らない人に、△△を理解して□□してもらうための文章

迷ったときは、この形で考えると読み手と目的を整理できます。どこまで説明すべきかも判断しやすくなります。

STEP
一番伝えたいことを1文にする

読み手と目的が決まったら、その文章で最も伝えたいことを1文にします。

たとえば運動不足について書く場合なら、次のように中心となる主張を決めます。

運動不足を解消するには、特別な運動だけでなく普段の活動量を増やすことが大切

この段階では、表現をきれいに整える必要はありません。文章全体の中心が分かれば十分です。

何を伝えたいか決めないまま書き始めると、思いついた情報を次々に追加しやすくなります。個々の内容が正しくても、読み終えたときに何の話だったのか分からない文章になりかねません。

長い文章ほど、この1文が情報を選ぶ基準になります。中心となる内容の理解に必要なら残し、関係が薄ければ削るという判断がしやすくなります。

STEP
必要な情報を選んで骨組みを作る

伝えたいことが決まったら、本文を書く前に必要な情報を並べます。

分かりやすい文章は、情報が多い文章とは限りません。詳しく説明しようとして情報を詰め込みすぎると、読み手が重要な部分を見つけにくくなります。文化庁も、分かりやすく書く条件として、伝える内容を絞り、副次的な内容は別に対応する考え方を示しています。

整理前

文章力の意味、読書、語彙、PREP法、要約、構成、本、AI、推敲、SNS、メールについて説明する。

これでは項目が並んでいるだけです。理解する順番まで整理すると、文章の骨組みが見えてきます。

整理後

文章力とは何か

書くときに何を変えるか

普段どう練習するか

道具をどう活用するか

この形なら、読み手がどの順番で理解するのかが見えます。

立命館大学「論文・レポートの書き方」でも、文章を書く際には全体の見取り図を作り、それに沿って構成する重要性が説明されています。

構成を作る目的は、すべての文章を同じ型に当てはめることではありません。読み手が次に知りたいことを考え、その順番に情報を置くことが目的です。

STEP
一段落一テーマで文を詰め込みすぎない

骨組みができたら、それぞれのまとまりを文章にします。

意識したいのは、一つの段落では一つの中心的な話をすることです。文章力の意味を説明している途中でおすすめ本の話へ移り、その後にまた定義へ戻ると、読み手は流れを追いにくくなります。

立命館大学の資料でも、一つの段落には一つの主題を置き、段落を組み合わせて文章全体を構成する考え方が示されています。

一文にも情報を詰め込みすぎないほうが読みやすくなります。

Before

文章力を高めるためには本を読むことも重要ですが、読むだけでは自分の文章の問題点には気づきにくいため、実際に文章を書いて読み返しながら修正することも重要です。

After

文章力を高めるには読書も有効です。ただし、読むだけでは自分の癖に気づきにくいものです。実際に書き、推敲する練習も必要です。

伝えている内容はほぼ同じですが、後者は一文ごとの役割が明確です。

一文を何文字以内にすると機械的に決める必要はありません。読み返したときに主語と述語の関係が分かりにくい、複数の話を一度に説明していると感じたら、文を分けられないか考えます。

STEP
全体から細部の順で推敲する

書き終えたら、誤字脱字だけを探すのではなく、文章そのものを編集します

鳥取大学附属図書館「講習会のご案内」でも、文章構成や推敲はレポート作成を学ぶうえで扱われています。

推敲するときは、細かな言葉から直すより、まず全体を確認したほうが効率的です。

  • 一番伝えたいことが読み取れるか
  • 読み手に必要な前提が抜けていないか
  • 結論に関係しない情報が混ざっていないか
  • 話の順番を変えたほうが理解しやすくないか
  • 同じ説明を繰り返していないか
  • 一文や一段落に情報を詰め込みすぎていないか

全体と段落を整えてから、最後に言い回しや誤字を直します。

文章を書いた直後は、頭の中に伝えたかった内容が残っています。文章に説明がなくても、自分では意味を補いながら読んでしまうことがあります。可能なら少し時間を空けたり、声に出して読んだりすると、引っ掛かる部分を見つけやすくなります。

文章力を上げるには、書いた量だけではなく、自分の文章を直した経験を増やすことも大切です。

日常で文章力を鍛える2つの練習

5つの基本は、文章を書くときにそのまま使えます。文章を組み立てる力を普段から鍛えたい場合は、読んで終わりにせず、自分で情報を整理し直す練習が役立ちます。

読んだ内容を100〜200字で要約する

ニュースやWeb記事、本の一節を読んだら、100〜200字程度で要約してみます。

要約は元の文章を単純に短くする作業ではありません。何について書かれていて、何が最も重要なのかを判断し、必要な情報だけを残します。

この作業では、文章力の中でも情報を選ぶ力と構成する力を同時に使います。読解や要約も文章作成に関わる能力として扱われています(徳島大学高等教育研究センター「文章力を身につけよう」)。

慣れてきたら、200字で書いた要約を100字まで縮めてみるのも一つの方法です。

何を削っても意味が変わらないのか、反対に何を削ると伝わらなくなるのかを考えるため、情報量を調整する練習になります。

良い文章の構造を別のテーマで再現する

読みやすい文章を見つけたら、表現をそのまま書き写すだけで終わらせず、構造を見ます。

冒頭では何を伝えているのか。どこで理由を説明し、どこで具体例を入れているのか。段落がどのような順番になっているのかを確認します。

問題を示す

原因を説明する

具体例を出す

解決方法を示す

このような構成なら、同じ流れを使って別のテーマを200〜300字程度で書いてみます。

文章そのものを覚えるのではなく、読みやすさを生んでいる設計を借りる方法です。読むだけだったインプットを、自分で組み立て直すアウトプットへ変えられます。

読書やAIはどう使えば文章力につながる?

文章力を上げる方法として読書はよく挙げられます。語彙や表現、さまざまな構成に触れられるため、読むこと自体に意味はあります。

ただし、本をたくさん読めば自動的に文章がうまくなるとは限りません。

料理を何度も食べても、それだけで作り方まで身につくわけではないのと似ています。文章力につなげるなら、読む→構造を見る→自分で書く→直すところまで進めます。

AIも使い方は同じです。

最初から文章をすべて作らせれば、自分がどこでつまずいているのかは見えにくくなります。文章力を鍛える目的なら、自分で書いた文章へのフィードバック役として使う方法があります。

AIへの指示例

この文章について、主語と述語のねじれ、不要な重複、論理が飛んでいる部分を指摘し、それぞれなぜ分かりにくいのか説明してください。

修正文をそのまま採用するのではなく、自分でも一度直してからAIの案と比べれば、自分にはなかった整理の仕方や言い換えを発見できます。

読書もAIも、それだけで文章力を上げてくれるものではありません。自分で考えて書き直す工程につなげることで、練習の材料になります。

良い文章は目的によって書き方が変わる

文章術では、結論を先に書く、PREP法を使う、一文を短くするといった方法が紹介されることがあります。どれも役立つ場面はありますが、すべての文章に当てはまる絶対的なルールではありません。

分かりやすい順番は、文章の目的によって変わります。

質問への回答なら、答えを早く知りたい人が多いため結論を先に置くと理解しやすくなります。作業マニュアルなら実際の作業順が自然です。トラブルの経緯を共有するなら、時系列で整理したほうが因果関係を追いやすい場合があります。

エッセイや小説では、あえて結論をすぐに示さず、描写や展開を重ねることにも意味があります。

文化庁も、文書の目的や種類、想定される読み手に応じて書き方を工夫する余地があるとしています(文化庁「公用文作成の考え方」)。

文章力が高い状態とは、一つの型を正確に守れることではありません。読み手と目的に合わせて、必要な情報と適切な順番を選べることも文章力の一部です。

何から始めればよいか迷うなら、今日送るメールや書いた文章を一つ使ってみてください。

誰に何を伝えたいのかを決め、一番伝えたいことを1文にします。そのうえで必要な情報だけを残し、順番を整え、書いたあとでもう一度読み直します。

特別な題材で長文を書く必要はありません。普段の文章で設計する→書く→編集するを繰り返すことが、読みやすく伝わる文章を身につける基本になります。


参考文献

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