ハヴィガーストの発達課題とは?6つの段階と各課題をわかりやすく解説

赤ちゃんが歩けるようになる、子どもが友だちと遊べるようになる、若者が仕事を選ぶ、お年寄りが老いを受け入れる。人は年代ごとに、その時期ならではの「乗り越えるべきこと」と向き合っています。こうした課題を整理して理論にまとめたのが、アメリカの教育学者ロバート・J・ハヴィガーストです。彼が提唱した「発達課題(developmental task)」という考え方を、この記事ではできるだけやさしく解説します。

看護師国家試験やキャリアコンサルタント試験、保育・教育系の勉強でもよく登場するテーマなので、試験対策として要点を押さえたい方にも役立つはずです。

目次

ハヴィガーストの発達課題とは

ひとことで言うと、発達課題とは「この年代でこれができるようになっておきたい」という人生の宿題のようなものです。ハヴィガーストは1948年に、人生をいくつかの段階に分け、それぞれの段階で達成しておきたい課題があると考えました。

ポイントは、課題がバラバラに存在するのではなく、つながっているという点です。ある段階の課題をうまくこなせると、本人は満足を感じ、次の課題にも取り組みやすくなります。逆につまずくと、その後の課題で苦労しやすくなる。歩けるようになってから走れるようになるように、前の段階での達成が次の段階の土台になるイメージです。なお、段階の分け方や年齢の幅は文献によって少しずつ違いますが、6つの段階で紹介されることが多く、この記事もその区分にそって説明します。

課題は3つの力から生まれる

ハヴィガーストは、それぞれの課題が3つの力の組み合わせで決まると考えました。からだの成長(身体的成熟)、まわりからの期待(社会・文化が求めること)、そして本人の願い(個人の欲求)の3つです。

たとえば「歩けるようになる」という乳幼児期の課題。これは足腰が育つというからだの成長だけでなく、「早く歩いてほしい」という家族の期待や、「自分で動きたい」という本人の願いがそろってはじめて達成されます。この3つの視点は、ハヴィガースト理論を理解するうえでいちばん大事な軸になります。

エリクソンの理論との違い

発達を段階で語る理論家としては、エリク・H・エリクソンも有名で、よく比べられます。違いはシンプルで、見ている場所が異なります。

エリクソンが注目したのは、心の中で起きる葛藤です。たとえば「人を信じられるかどうか」「自分は何者かという迷い」といった内面的なテーマを8つの段階に分けて描きました。一方ハヴィガーストが見たのは、歩く・読み書きする・仕事に就くといった、目に見える行動や社会での役割です。エリクソンは心の内側、ハヴィガーストは社会との関わり。この対比で覚えておくとわかりやすいでしょう。

ハヴィガーストの6つの発達段階と発達課題

ハヴィガーストは人生を6つの段階に分けました。乳幼児期、児童期、青年期、壮年初期、中年期、老年期です(壮年初期は文献によって「成人初期」「成人前期」とも呼ばれます。この記事では壮年初期で統一します)。まずは全体像を図で見てみましょう。

乳幼児期(0〜6歳) … 歩く・話す・善悪 → 生きる基礎を身につける

児童期(6〜12歳) … 読み書き計算・友だち → 学校社会への適応

青年期(13〜17歳) … 自立・職業準備・価値観 → 大人への準備

壮年初期(18〜30歳) … 結婚・育児・就職 → 家庭と職業の確立

中年期(30〜50代) … 社会的責任・次世代育成 → 人生の充実と維持

老年期(60代〜) … 衰えと喪失の受容 → 人生の統合

ここからは、各段階で何が課題になるのかを見ていきます。

乳幼児期(おおむね6歳以下)

生きていくための土台をつくる時期です。やることは盛りだくさんで、からだ・あたま・人との関わりの3方向に分けると整理しやすくなります。

からだの面では、歩く、固形物を食べる、話す、排泄をコントロールする、そして体調を安定させること。あたまの面では、身のまわりの世界について「これは何か」という単純な概念をつかんでいくこと。人との関わりの面では、家族と心を通わせること、そして善悪を区別する力と良心を育てることが課題になります。ちなみに看護師国家試験では「善悪の区別を学ぶのはどの時期か」が問われたことがあり、答えはこの乳幼児期です。

児童期(おおむね6〜12歳)

家庭という小さな世界から飛び出し、学校という社会になじんでいくのがこの時期のテーマです。課題は、からだ・勉強・友だち・道徳の4つでとらえると見通しがよくなります。

からだの面では、遊びに必要な運動の技能を身につけ、成長していく自分を前向きに受け止めること。勉強の面では、読み・書き・計算という基礎学力や、日常生活に必要な考え方を身につけること。友だちの面では、仲良くつき合うこと、親や大人に頼りきりだった状態から少しずつ自立していくこと、学校や地域といった集団とのつき合い方を覚えること。そして道徳の面では、善悪や価値判断の物差しを育てていくことが求められます。

青年期(おおむね13〜17歳)

「自分とは何者か」を探りながら、心とお金の両面で親から独り立ちしていく時期です。具体的には、同年代の男女と成熟したつき合いを築くこと、自分のからだを理解してうまく使うこと、親やまわりの大人から気持ちのうえで自立することなどが挙げられます。

将来に関する課題も多く、職業を選んで準備すること、結婚や家庭生活への心構えをもつこと、社会の一員として必要な知識や責任ある行動を身につけること、自分なりの価値観や倫理観を育てることなどが含まれます。「経済的に自立する自信をもつ」という課題もありますが、いまの日本では実際の独立はもっと後になりがちなので、その準備や心構えの段階と読み替えると無理がありません。

壮年初期(おおむね18〜30歳)

いよいよ大人として、自分の家庭と仕事をかたちにしていく時期に入ります。パートナーを選び、一緒に暮らすことを学び、子どもを迎えて育て、家庭を切り盛りする。同時に、仕事に就き、社会人としての責任を引き受け、気の合う仲間やコミュニティを見つけることも課題になります。ここで家庭と仕事が安定すると、次の中年期にゆとりをもって臨めるようになります。

中年期(おおむね30〜50代)

社会の中心として働きながら、上の世代と下の世代の両方を支える、いわば板ばさみにもなりやすい時期です。一人前の社会人として責任を果たし、生活の経済的な基盤を保つこと。10代に差しかかったわが子が、信頼できる幸せな大人になれるよう手助けすること。仕事以外の時間を充実させ、パートナーと改めて一人の人間どうしとして向き合うこと。そして、自分自身のからだの変化を受け入れ、年老いた親に寄り添うことなども課題になります。

老年期(おおむね60代以上)

体力や役割が変わっていくなかで、それを受け止め、人生をしめくくっていく時期です。からだの衰えや健康の変化に折り合いをつけ、退職にともなう収入の減少に適応し、いつか訪れる配偶者との別れに向き合う。一方で、同世代の人と明るくあたたかい関係を保ち、社会の一員としての役割も担いながら、自分らしく暮らせる環境を整えることが課題になります。

こうした課題と向き合うことは、これまでの人生を「これでよかった」と肯定的に意味づける作業でもあります。この「人生を意味づける」という視点は、エリクソンが老年期に置いた「自我の統合」とも重なるところで、2つの理論をつなぐ橋として覚えておくと理解が深まります。

試験で押さえておきたい頻出ポイント

試験では問われ方がだいたい決まっています。次の5つを押さえておくと得点につながりやすいです。

  • 課題を生む3つの力は、からだの成長・まわりの期待・本人の願い。
  • 善悪の区別を学ぶのは乳幼児期。良心や価値判断の物差しを育てるのは児童期。
  • ハヴィガーストは行動や社会的役割、エリクソンは心の内面に注目している。
  • 発達課題は達成すると消えるのではなく、段階を追って積み重なっていく。
  • 年齢の区分は固定ではなく、文献によって幅がある。

特に「年齢区分は決まっていない」「段階はつながっている」の2つは、選択肢のひっかけとして出やすいので注意しておきましょう。

現代での活かし方と注意点

ハヴィガーストの発達課題は、教育や保育、看護、キャリア支援など、人と関わる現場で広く使われています。相手が今どんな課題に直面しているかを見立てる「地図」として便利だからです。

教育・看護・キャリア支援での使い方

たとえば看護の現場では、患者さんの年齢から発達課題を考えることで、悩みの正体が見えやすくなります。児童期の子なら友だち関係づくりや勉強の支援を、お年寄りなら衰えや喪失を受け止める心のケアを、それぞれの課題に合わせて計画できます。

キャリア支援でも応用できます。たとえば、青年期の終わりから壮年初期にかけて「自分にどんな仕事が向いているのかわからない」と進路に迷う人には、職業選びの準備という課題の視点から、自己理解を深めたり職業体験を促したりする関わりが考えられます。相手がどの課題と格闘しているのかがわかると、支援のピントが合いやすくなるのです。

時代背景を踏まえて使う

ただし、この理論が生まれたのは1930〜50年代のアメリカ。当時の中産階級の暮らしぶりが色濃く反映されている点には注意が必要です。たとえば、大学に進む人が少なく早くから働くのが普通だった時代なので、青年期に職業準備が課題として置かれています。「男らしい/女らしい役割を学ぶ」といった性別を前提にした課題も、今の価値観とはそぐわない部分があります。

さらに今は、晩婚化や非婚、共働き、転職の一般化など、人生のたどり方そのものが多様になりました。中年期以降の学び直し(リスキリング)のように、昔は想定しにくかった課題も出てきています。長寿化で老年期を前期・後期に分けて考える見方も広がっています。だからこそ、原典や信頼できる資料を確かめながら、今の多様な生き方に合わせて柔軟に使うことが大切です。

まとめ

ハヴィガーストの発達課題は、人生を6つの段階に分け、それぞれの時期にやっておきたいことを示した理論です。各課題は、からだの成長・まわりの期待・本人の願いという3つの力から生まれ、前の段階の達成が次の土台になるという形でつながっています。心の内面を描いたエリクソンの理論と合わせて見ると、人の成長をより立体的にとらえられます。

実際に使うときは、理論が生まれた時代背景を頭に置き、今の多様な価値観と照らし合わせながら柔軟に活用するのがコツです。「年代ごとの課題」という視点をもつだけで、自分の人生や目の前の相手のことが、ぐっと理解しやすくなるはずです。

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