記憶力を上げる方法|科学的に効果がある覚え方と復習のコツ

勉強した内容をすぐ忘れる、読んだ本の知識が身につかない、人の名前がなかなか覚えられない。こうした問題は、覚え方や復習方法を工夫することで改善できる場合があります。

記憶力を上げる方法として、特に研究による裏付けが強いのが、自力で思い出す「アクティブリコール」と、時間を空けて繰り返す「分散復習」です。

この2つを基本に、覚える内容に合わせた記憶術、効果的な復習間隔、記憶を支える生活習慣まで、日常で実践できる方法を紹介します。

目次

記憶力を上げる基本の方法

新しい知識を長く覚えておきたいなら、まずは次の流れを試してみてください。

  1. 内容を読み、意味や仕組みを理解する
  2. 本やノートを閉じ、自分の言葉で説明する
  3. 日を空けて、もう一度思い出す

認知心理学の研究では、自力で思い出す練習と、時間を空けた復習が、長期的な記憶の保持に効果的だとされています。文部科学省の資料でも、これらは効果的な学習方法として紹介されています。

一方、繰り返し読むことやマーカーで線を引くことは、理解を助ける場合はあるものの、それだけで長く覚えられるとは限りません。覚えた内容を自力で答えられるか、確認する機会を作るとよいでしょう。

自力で思い出すアクティブリコール

アクティブリコールとは、覚えた内容を本やノートを見ずに思い出す練習です。

例えば、本を一章読んだら、いったん閉じて「どんなことが書かれていたか」「なぜそうなるのか」を説明してみます。うまく説明できなかった部分は読み直し、もう一度自分の言葉で話してみましょう。

なぜ、この方法が効果的なのでしょうか。

本を何度も読み返すと、文章に見覚えがあるため、よく覚えたように感じることがあります。しかし、資料を閉じて質問されると、答えられない場合もあります。

自力で思い出す練習では、答えにつながる情報を記憶の中から探し、取り出すことになります。この練習自体が、その後の記憶保持を高めることが研究で確認されています。

また、答え合わせによって、覚えている部分と曖昧な部分を区別できます。最初から正解できなくても、答えを確認して再挑戦すれば、学習を進められます。

時間を空ける分散復習

一度覚えた知識を長く保持したい場合は、学習を複数の日に分ける方法が効果的です。

例えば、同じ内容を合計60分勉強するとして、1日に60分まとめて学習する方法と、20分ずつ3日に分けて学習する方法があります。

学習内容や間隔によって結果は異なりますが、多くの研究で、時間を空けた学習が長期的な記憶保持に有利になることが確認されています。

この方法を「分散復習」と呼びます。

前回は簡単に答えられた内容でも、数日後には思い出すのに時間がかかることがあります。そこで再び記憶を取り出し、正解を確認することが、長期的な学習に役立ちます。

復習するときも、資料を読み直す前に、何も見ずに思い出してみましょう。

理解と丸暗記の使い分け

例えば、買い物で「20%引き」を計算する場合を考えてみましょう。

「元の価格に0.8を掛ける」と丸暗記する方法もありますが、20%引きは元の価格から20%を差し引くことだと理解していれば、計算式を忘れても答えを導けます。

1,000円の商品なら、20%にあたる200円を引いて800円です。

仕組みを理解しておくと、10%引きや30%引きにも応用できます。知識同士の関係が思い出す手がかりになり、別の問題にも対応しやすくなるのです。

一方、人の名前、英単語の綴り、歴史の年号など、理屈から導けない情報には反復練習や語呂合わせが役立ちます。

仕組みを理解できる内容は、自分の言葉で説明する練習が向いています。正確に覚える必要がある情報は、質問を作って繰り返し答えるとよいでしょう。

覚える内容に合わせた5つの記憶術

記憶術には、思い出す手がかりを増やす方法、情報を整理する方法、似た知識を区別する方法があります。

記憶術主な働き向いている内容
場所法場所や順序を手がかりにする買い物リスト、順番
関連づけ・精緻化既存の知識と結びつける人物名、用語、仕組み
図解化・描画関係や構造を視覚的に整理する仕組み、流れ、構造
チャンク化情報を意味のあるまとまりにする数字、分類、多数の情報
交互学習似た知識の違いを区別する類似概念、問題の解法

これらは効果の大きさによる順位ではありません。研究で効果が確認されている範囲や条件も異なるため、覚える対象によって使い分けます。

場所法と関連づけ

例えば、買い物で「牛乳、卵、パン、バナナ、洗剤」の5つを覚えたいとします。

**場所法(記憶の宮殿)**を使うなら、自宅の玄関に大きな牛乳パックが置いてあり、廊下には卵が転がり、リビングのテーブルにはパンが並んでいる様子を想像します。

さらに、台所にはバナナ、洗面所には洗剤が置いてあると考えます。

思い出すときは、頭の中で玄関から洗面所まで順番に歩いてみます。

慣れ親しんだ場所の順路は思い出しやすいため、そこに情報を結びつけると、場所そのものが手がかりになります。順番のある情報を覚える場合に使いやすい方法です。

関連づけ・精緻化は、新しい知識を、すでに知っている情報や経験と結びつける方法です。

例えば、初対面の人の名前を覚える場合、名前を聞いたら一度声に出して呼び、相手の顔や会話の内容と結びつけます。会話が終わった後に、その人の顔を思い浮かべながら名前を思い出してみると、覚えられたか確認できます。

新しい知識を学ぶときには、「以前知っていた何と関係するか」「なぜそうなるのか」と考える方法もあります。

昔よく聞いていた音楽が流れた途端に、当時の友人や教室の様子を思い出すことがあります。脳は経験した情報を関連づけて記憶しており、一部の情報が別の記憶を呼び起こす手がかりになるのです。

この性質を利用して、覚えたい情報に複数の手がかりを作るのが、関連づけや場所法の考え方です。

図解化とチャンク化

複雑な仕組みや流れを覚えるときには、簡単な図が役立ちます。

例えば、水が蒸発して雲になり、雨として地上に降り、川を通って海へ戻る流れを覚える場合です。

「海→蒸発→雲→雨→川→海」と矢印で描けば、全体のつながりを確認できます。

一度内容を理解したら、資料を閉じて図を再現してみましょう。どの部分の関係を理解できていないのかも確認できます。

単語や用語を簡単な絵に置き換えて覚える方法もあります。図解化は、特に構造や位置関係、因果関係などを視覚的に表せる内容に向いています。

チャンク化は、情報を意味のあるまとまりにする方法です。

例えば「09012345678」という電話番号も、「090-1234-5678」と区切ると扱いやすくなります。

多くの情報を関連するグループに分けることで、全体を把握しやすくなるのが特徴です。

交互学習

数学の問題を解くとき、同じ解法の問題ばかり続けていると、使う解法を考えなくても答えられる場合があります。

そこで、異なる種類の問題を混ぜて練習するのが「交互学習(インターリービング)」です。

例えば、割合の計算で「値引き」「値上がり」「元の価格を求める」という3種類の問題を練習するとします。

  • まとめて練習:A→A→A→B→B→B→C→C→C
  • 混ぜて練習:A→C→B→A→B→C→B→A→C

問題を混ぜると、その都度「どの計算方法を使うべきか」を考えることになります。

交互学習は、似た内容を区別する場面で効果が期待できる方法です。ただし、学習内容によって効果は異なり、数学では研究によって結果にばらつきがあります。

最初に各種類の基本を理解し、その後に問題を混ぜて練習すると取り組みやすくなります。

効果的な復習間隔とスケジュール

復習の間隔は、どのくらい先まで覚えておきたいかによって変わります。

2008年にCepedaらが1,350人以上を対象に行った研究では、事実情報を学習し、間隔を空けて1回復習した後、最終テストを実施しました。

その結果、効果的な学習から復習までの間隔は、記憶を保持したい期間によって変わることが示されました。

復習から最終テストまでの期間効果的だった学習から復習までの間隔
約1週間期間の約20〜40%(換算で約1〜3日)
約1年間期間の約5〜10%(換算で約3〜5週間)

長期間覚えておきたいほど、効果的な復習間隔も長くなる傾向があります。

この研究は、事実情報を学習し、1回復習する条件で得られた結果です。何度も復習する場合の最適スケジュールを直接示したものではありません。

また、復習間隔を徐々に延ばす方法が、一定間隔で復習する方法より常に優れているわけではないことも、研究で示されています。

期限がある試験の復習

試験日が決まっている場合は、本番までの期間を考えて復習日を設定します。

例えば、試験まで約1週間なら、学習した翌日から数日以内に一度思い出す練習を行い、その後も本番までに確認する方法が考えられます。

試験まで数週間以上ある場合は、少し長めの間隔を設けることもできます。

ただし、学習内容をまだ十分に理解していない場合や、最初の復習で思い出せなかった場合は、早めに再確認します。

日常の知識を長く覚える復習

読書や仕事で得た知識など、明確な試験日がないものは、次のスケジュールを一例として使えます。

  • 当日:学んだ内容を見ずに説明する
  • 翌日:再び思い出す
  • 3日後:覚えているか確認する
  • 1週間後:もう一度答える
  • その後:数週間から数か月の間隔で確認する

これは復習を習慣にするための目安です。すべての人や学習内容に共通する最適な日程が確立されているわけではありません。

復習したときの状態によって、次の間隔も調整できます。

復習時の状態次の復習の目安
すぐ正確に思い出せた間隔を長くする
少し考えて思い出せた同程度の間隔で確認する
思い出せなかった正解を確認し、短い間隔で再挑戦する

この調整方法は、復習時間を配分するための実用的な目安です。

すでに覚えている内容への復習時間を減らし、忘れやすい内容を重点的に確認するために利用できます。

記憶力を支える生活習慣

記憶の働きには、学習方法に加えて睡眠や運動などの生活習慣も関係しています。

一方、脳トレやサプリメントによって記憶力そのものを高める効果については、研究結果を区別して考える必要があります。

睡眠と運動

睡眠は、学習した情報が長期的な記憶として定着する過程を支えています。眠っている間にも脳では記憶に関係する活動が続いており、学習した情報の再活性化に関係する現象も報告されています。

睡眠不足になると注意力や集中力が低下し、新しい情報も覚えにくくなります。勉強や読書で覚えた内容を定着させるためにも、十分な睡眠時間を確保し、睡眠リズムを整えることが役立ちます。

運動習慣も脳の健康や認知機能と関係しています。特に中高年・高齢者を対象とした研究では、身体活動によって一部の認知機能が改善した例が報告されています。

ウォーキングなどの身体活動を日常生活に取り入れることは、全身の健康維持にもつながります。

食事については、特定の食品に記憶力向上を期待するよりも、栄養バランスのよい食生活を基本に考えるとよいでしょう。

なお、物忘れが急に増えた場合や、日常生活に支障が出るほど記憶の状態が変化した場合は、医療機関で原因を確認してください。

脳トレとサプリメント

記憶力を高めたいと考えたとき、脳トレや記憶力向上をうたうサプリメントが気になる人もいるでしょう。

脳トレについては、練習した課題そのものが上達する効果は確認されています。一方、訓練していない能力や日常生活での幅広い認知機能に効果が及ぶかについては、十分な根拠が得られていません。

例えば、数字を覚えるゲームが上達しても、それによって人の名前や仕事の内容まで覚えやすくなるとは限りません。

サプリメントについても、健康な人の記憶力を幅広く高める効果が十分に確立された成分は、現時点で一般的に知られていません。

特定の栄養素が不足している場合には、適切な栄養補給が健康状態の改善につながることがあります。記憶力への効果を考える際も、対象者の健康状態や成分、摂取量などを区別して判断する必要があります。

今日からできる15分の記憶習慣

普段の生活に取り入れるなら、まずは1日15分程度から始めてみましょう。

最初の5分で前日までに学んだことを思い出し、次の5分で新しい内容を学びます。最後の5分は、学んだことを何も見ずに説明し、答え合わせをします。

例えば、本を読んだら、その内容について次の3つの質問を作ります。

  1. 何について書かれていたか
  2. なぜそうなるのか
  3. 自分の生活や仕事でどう使えるか

翌日には、質問だけを見て答えてみます。覚えていなかった部分を確認し、数日後にもう一度試します。

質問はスマートフォンのメモや単語カードに保存しておけば十分です。覚える内容が増えてきたら、Ankiのような間隔反復アプリを利用して復習日を管理する方法もあります。

15分という時間は、習慣にするための目安です。覚えたい内容や生活に合わせて調整できます。

今日学んだことを一つ選び、資料を閉じて自分の言葉で説明し、翌日もう一度思い出してみてください。そこから記憶術を日常に取り入れられます。


参考文献

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