準確定申告しないとどうなる?期限後のペナルティと対処法

必要な準確定申告を4か月の期限までに行わないと、本来の所得税に加えて無申告加算税が課される可能性があり、納付が遅れた日数に応じて延滞税も発生します。

期限を過ぎても、申告できなくなるわけではありません。申告義務と納付税額があるなら、気づいた時点で期限後申告と納付を進めることが重要です。

ただし、亡くなった人全員に準確定申告が必要なわけではありません。もともと申告義務がない場合や、所得税が還付されるだけの場合は、4か月を過ぎたことだけを理由に無申告加算税や延滞税が発生するわけではありません。

この記事のポイント
  • 準確定申告の期限は、原則として相続開始を知った日の翌日から4か月以内
  • 申告義務と納付税額がある場合は、無申告加算税と延滞税が発生する可能性がある
  • 申告義務がない場合や還付申告だけの場合は、4か月を過ぎただけでは通常ペナルティは発生しない
  • 期限後でも申告できるため、申告書の作成と納付を速やかに進める

関連記事:確定申告しないとどうなる?申告義務の有無によるペナルティと正しい対処法

目次

まず確認すること|申告義務と納付税額で結果が変わる

準確定申告とは、亡くなった人の所得税について、相続人などが本人に代わって行う確定申告です。年の途中で亡くなった場合は、その年の1月1日から死亡日までの所得と税額を計算します。

国税庁の案内によると、申告と納付の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。一般的には死亡日と死亡を知った日が同じですが、死亡の事実を後から知った場合などは起算日が異なることがあります。

申告していない場合の結果は、故人に確定申告義務があったか、申告によって納付と還付のどちらになるかで変わります。

  • 申告義務がなく納付もない:所得税の義務申告は原則不要
  • 申告義務があり納付税額がある:無申告加算税と延滞税が発生する可能性がある
  • 申告すると所得税が還付される:4か月を過ぎただけでは通常ペナルティは発生しない

申告義務がない場合でも、還付申告や住民税申告が必要・有利になることがあります。「所得税の申告義務がないから何もしなくてよい」とは限らない点に注意してください。

故人に申告義務があったか 納付税額がある 申告義務あり 還付になる 納め過ぎの税金あり 申告義務なし 所得税は原則不要 期限後申告・納付 ペナルティの可能性 還付申告を検討 原則として5年間 自治体へ確認 住民税申告は別判断
故人に申告義務があったか 納付税額がある 申告義務あり 期限後申告・納付 ペナルティの可能性 還付になる 納め過ぎの税金あり 還付申告を検討 原則として5年間 申告義務なし 所得税は原則不要 自治体へ確認 住民税申告は別判断

準確定申告しなかった場合のペナルティ

無申告加算税が課される可能性がある

申告義務があるのに期限内に準確定申告をしなかった場合は、納付すべき所得税に加えて無申告加算税が課される可能性があります。

国税庁の「確定申告を忘れたとき」で示されている基本割合は、期限後申告をした時期によって異なります。

  • 税務調査の事前通知前に自主的に申告:5%
  • 事前通知後で調査による決定を予知する前:50万円以下は10%、50万円超300万円以下は15%、300万円超は25%
  • 調査後など決定を予知した後:50万円以下は15%、50万円超300万円以下は20%、300万円超は30%

納付税額が300万円を超える部分の区分は、2024年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について設けられました。現行制度では、50万円以下、50万円超300万円以下、300万円超の3段階で基本割合が示されています。

過去にも無申告を繰り返している場合などは、さらに加算されることがあります。また、所得や取引を隠蔽・仮装して意図的に申告しなかったと認められる場合は、無申告加算税に代えて重加算税の対象となる可能性があります。

法定申告期限から1か月以内に自主的に期限後申告を行い、期限内申告の意思があったと認められる所定の要件をすべて満たした場合は、無申告加算税がかからないことがあります。ただし、1か月以内に提出すれば自動的に免除されるわけではありません。

延滞税は納付日まで日割りで増える

延滞税は、申告書の提出ではなく、所得税の納付が遅れたことに対して発生します。

法定納期限の翌日から実際の納付日までの日数に応じて日割りで計算されるため、期限後申告書を提出しただけでは延滞税の増加は止まりません。申告によって納付税額が確定した場合は、申告と納付をあわせて進める必要があります。

国税庁の「延滞税について」によると、2026年中の割合は次のとおりです。

  • 納期限の翌日から2か月を経過する日まで:年2.8%
  • 納期限の翌日から2か月を経過した日以後:年9.1%

延滞税の割合は年ごとに見直されます。延滞期間が複数年にまたがる場合は、それぞれの年に適用される割合で計算します。

期限後でも申告できなくなるわけではない

4か月の期限を過ぎても、準確定申告を受け付けてもらえなくなるわけではありません。期限後申告として提出できます。

税務署から指摘を受ける前に自主的に申告した場合は、調査後などに申告する場合より無申告加算税の基本割合が低くなります。延滞税も納付日まで計算されるため、ペナルティの計算を待って手続きを止めないことが大切です。

なお、故人が前年分の確定申告をしないまま、翌年1月1日から通常の確定申告期限までに亡くなった場合は、前年分についても準確定申告が必要になることがあります。この場合も期限は、原則として相続開始を知った日の翌日から4か月以内です。

ペナルティが発生しないケース

もともと準確定申告の義務がない

亡くなった人が申告不要の給与所得者だった場合などは、準確定申告をしなくても無申告にはなりません。

例えば、収入が1か所からの給与のみで、勤務先による年末調整で所得税の精算が完了し、ほかに申告が必要な所得がない場合です。死亡した年の年末調整が行われているかは、勤務先が発行する源泉徴収票で確認します。

公的年金等については、次の両方を満たす場合、所得税の確定申告は原則不要です。

  • 公的年金等の収入金額の合計が400万円以下
  • 公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下

この制度は国税庁の「公的年金等の課税関係」で確認できます。ただし、源泉徴収の対象にならない一定の外国年金を受け取っている場合などは、確定申告不要制度を利用できません。

所得税の準確定申告が不要でも、住民税申告が必要になる場合があります。亡くなった人の住所地の自治体にも確認してください。

申告すると所得税が還付される

故人の給与や年金から源泉徴収されていた所得税が、実際に計算した税額より多い場合は、準確定申告によって還付を受けられることがあります。

例えば、死亡日までの所得が年間の見込みより少なかった場合や、死亡日までに支払った医療費について医療費控除を適用できる場合です。

還付申告は、納税のために義務として行う申告ではありません。そのため、納付税額がある準確定申告の4か月期限とは扱いが異なり、4か月を過ぎただけで無申告加算税や延滞税が発生するものではありません。

国税庁の「還付申告」では、一般の還付申告は原則として対象年の翌年1月1日から5年間提出できると案内されています。還付を請求できる期間は無期限ではないため、還付になる場合も放置しないようにしましょう。

還付金は相続税の計算に影響する場合があります。相続税申告が必要な可能性があるときは、準確定申告と並行して確認してください。

準確定申告が必要か確認する方法

事業所得や不動産所得があった

故人が個人事業、フリーランス、不動産賃貸などをしていた場合は、準確定申告が必要になる可能性が高くなります。

ただし、売上や家賃収入があっただけで一律に申告義務が生じるわけではありません。収入から必要経費を差し引き、所得控除、税額控除、源泉徴収税額、予定納税額まで反映して判断します。

事業所得や不動産所得が赤字だった場合でも、ほかの所得との損益通算や青色申告の特典に関係することがあります。納付税額がないという理由だけで手続きを終わらせないほうが安全です。

給与や年金以外の所得を見落としていないか

故人が会社員だった場合も、給与だけを見て申告不要と判断するのは早計です。特に、次のような所得や入金を確認してください。

  • 副業による報酬
  • アパートや駐車場の賃貸収入
  • 同族会社から受け取った貸付金の利子や不動産の賃貸料
  • 公的年金や企業年金
  • 生命保険の満期保険金
  • 土地・建物・株式などの売却
  • 配当や原稿料などの収入

故人の所得を確認するときは、次の資料を照合します。

  • 過去の確定申告書:毎年申告していた所得の種類
  • 給与・年金の源泉徴収票:収入額と源泉徴収税額
  • 通帳:家賃、副業報酬、配当などの入金
  • 固定資産税の通知書:不動産を所有していた事実
  • 証券会社の報告書:株式の売却や配当
  • 同族会社の支払記録:給与以外の利子や賃貸料

勤務先で年末調整を受けていたとしても、給与以外の所得を含めると確定申告が必要になる場合があります。

給与所得者と年金受給者の申告不要条件

国税庁の「給与所得者で確定申告が必要な人」では、給与所得者でも次のような場合に確定申告が必要とされています。

  • 給与収入が2,000万円を超える
  • 1か所から給与を受け、給与・退職所得以外の所得が20万円を超える
  • 2か所以上から給与を受け、年末調整されなかった給与収入などが一定の条件を超える
  • 源泉徴収されない給与を受け取っていた
  • 同族会社から給与以外に貸付金の利子や賃貸料を受け取っていた

年金受給者は、公的年金等の収入額だけでなく、給与、不動産所得、副業所得なども含めて判断します。「年金が400万円以下なら必ず申告不要」というわけではありません。

期限を過ぎたときの対処法

期限を過ぎた場合は、ペナルティの金額を先に確定しようとして手続きを止めず、申告の要否と納付税額を速やかに確認します。

STEP
故人の所得に関する資料を集める

過去の確定申告書、給与と年金の源泉徴収票、通帳、事業帳簿などを集めます。毎年依頼していた税理士がいる場合は、過去の申告データが残っていないか問い合わせます。

STEP
申告義務と納付税額を確認する

所得、必要経費、所得控除、税額控除、源泉徴収税額、予定納税額を反映し、納付と還付のどちらになるか確認します。

STEP
期限後申告書を提出する

申告義務がある場合は、期限後申告書と準確定申告書の付表を作成し、故人の死亡当時の納税地を管轄する税務署へ提出します。

STEP
納付税額を速やかに納める

納付税額がある場合は、申告書の提出とあわせて速やかに納付します。申告書を提出しただけでは、延滞税の増加は止まりません。

e-Taxを利用する場合の注意点

準確定申告はe-Taxでも提出できますが、通常の確定申告書等作成コーナーでは準確定申告書を作成できません。

電子申告をする場合は、国税庁の準確定申告のe-Tax対応を確認し、e-Taxソフト等を利用します。

書類がそろわない場合は税務署へ相談する

源泉徴収票が見つからない場合は、勤務先や年金の支払者へ再発行を依頼します。事業の帳簿が見つからないときは、通帳、請求書、領収書、取引先の記録などから取引を確認してください。

資料不足を理由に、根拠のない概算額で申告するのは避けるべきです。一方で、すべての書類がそろうまで何もしないことも適切ではありません。

不足している資料と現在分かっている所得を整理し、死亡時の納税地を管轄する税務署または税理士へ相談しましょう。特に、次の場合は早めの専門相談が必要です。

  • 土地・建物・株式などを売却している
  • 事業帳簿が見つからない
  • 前年分も未申告のまま亡くなっている
  • 消費税申告も必要な可能性がある
  • 相続人同士で申告内容がまとまらない
  • 税務署から連絡を受けている

複数相続人と事業承継で注意すること

相続人が複数いる場合の申告と納付

相続人などが2人以上いる場合は、原則として連署した準確定申告書を提出します。ただし、他の相続人の氏名を付記し、それぞれが別々に提出することも可能です。この場合、提出した相続人は申告内容を他の相続人へ通知する必要があります。

準確定申告によって確定する故人の所得税は、国税通則法第5条に基づき、原則として各相続人が相続分に応じて納付義務を承継します。代表者が申告書を提出したからといって、代表者だけが全額を最終的に負担するとは限りません。

一方、無申告加算税などの附帯税は、期限を過ぎた時点や各相続人の申告状況との関係が問題になる場合があります。すべての相続人が一律に連帯して負担する、または申告を担当した相続人だけが負担すると単純には判断できません。

相続人ごとの納付額や附帯税の扱いが分からない場合は、相続関係と相続分が分かる資料を用意し、所轄税務署へ確認してください。

事業を引き継ぐ場合の青色申告承認申請

故人が青色申告をしていても、その承認が事業を引き継いだ相続人へ自動的に引き継がれるわけではありません。

相続人が青色申告を希望する場合は、相続人自身が青色申告承認申請書を提出する必要があります。青色申告者だった故人の事業を相続により承継した場合の期限は、死亡日に応じて次のように異なります。

  • 死亡日が1月1日から8月31日:死亡日から4か月以内
  • 死亡日が9月1日から10月31日:その年の12月31日まで
  • 死亡日が11月1日から12月31日:翌年2月15日まで

詳細は国税庁の所得税の青色申告承認申請手続で確認できます。

この申請期限は、準確定申告の期限とは別に管理します。準確定申告が期限後になったからといって、青色申告承認申請の期限が自動的に延長されるわけではありません。

また、故人の準確定申告が期限後になると、期限内申告を要件とする55万円または65万円の青色申告特別控除を適用できない可能性があります。事業所得や不動産所得がある場合は、準確定申告の税額だけでなく、青色申告の期限と控除要件も確認してください。

期限を過ぎていても手遅れではない

必要な準確定申告をしていないと分かった場合は、故人の過去の申告書と源泉徴収票を確認し、申告書の作成と納付を止めずに進めることが、追加負担を抑えるための最初の一歩です。

よくある質問

準確定申告の4か月の期限を過ぎたら申告できませんか?

期限を過ぎても、期限後申告として提出できます。納付税額がある場合は延滞税が納付日まで計算されるため、申告と納付を速やかに進めてください。

準確定申告をしなければ必ずペナルティが発生しますか?

必ず発生するわけではありません。もともと申告義務がない場合や、申告すると還付になるだけの場合は、4か月を過ぎたことだけを理由に無申告加算税や延滞税が発生するものではありません。

申告書を提出すれば延滞税の増加は止まりますか?

申告書を提出しただけでは止まりません。延滞税は納付日までの日数に応じて計算されるため、納付税額がある場合は申告とあわせて納付する必要があります。

相続人が複数いる場合、代表者だけが税金を負担しますか?

代表者が申告書を提出したという理由だけで、代表者だけが全額を最終的に負担するとは限りません。故人の所得税は、原則として各相続人が相続分に応じて納付義務を承継します。


参考資料

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