最後に触れたのがいつだったか思い出せない。そんな状態が続くと、「私たちはもうダメなのかも」と不安になりますよね。でも、過去にセックスレスを経験した既婚者を対象にした調査では、約半数が実際に解消を経験しています。きっかけは特別なことではなく、多くは「ある一つの行動」から始まっています。
この記事では、調査データと実際に悩んだ人たちの声をもとに、セックスレスが起きる理由と、今日から踏み出せる解消のステップを整理しました。読み終える頃には、何から始めればいいかが具体的に見えてきます。
この記事のポイント
- 解消の第一歩は「話し合い」がデータ上も最多
- 原因の1位は「育児・家事の多忙」
- カギは「温度差」への歩み寄り
- いきなりセックスを目指さず段階的に進める
セックスレスとは?まず現状を知る
日本性科学会は、セックスレスを「特殊な事情が認められないにもかかわらず、カップルの合意したセックスやセクシャル・コンタクトがいずれも1ヶ月以上なく、その後も長期にわたることが予想される場合」と定義しています(2024年アップデート版)。
ここで大切なのは、「1ヶ月ない=即セックスレス」ではないという点です。単発の空白ではなく、「今後も続きそう」という見通しを含むのが定義の核心です。仕事の繁忙期や体調不良で一時的に間が空くのは、多くのカップルに起こる自然なことだと理解しておきましょう。
現状として、相模ゴム工業の調査では既婚者の約55%、日本家族計画協会の調査でも夫婦の約半数がセックスレスとされ、いまや珍しい悩みではありません。「うちだけがおかしいのでは」と自分を責める必要はまったくないのです。セックスレスは多くの夫婦が通る道であり、そして約半数が抜け出している道でもあります。
なぜセックスレスになるのか
解消への近道は、まず「なぜこうなったのか」を正しくつかむことです。浜松町第一クリニックが20〜40代の既婚男女1,518人を対象に行った2023年の調査(以降引用するデータは、特記なき限りこの調査に基づきます)では、原因に男女・世代を超えた共通点が見えてきました。
原因の1位は「育児・家事の多忙」
最も注目すべきは、20代男性を除く全世代で「育児と家事が忙しくなったから」が原因の1位だったことです。特に30代女性では36.9%にのぼります。愛情が冷めたからではなく、単純に心と体の余裕が奪われているケースが非常に多いのです。
なお「浮気が原因では」と疑ってしまう人もいますが、この調査で「パートナーが浮気・不倫をしたから」を挙げた人は各世代で数%にとどまり、上位には入っていません。原因の多くは、不貞ではなく多忙や疲労といった環境要因なのです。
立場によって「見えている景色」が正反対
同じセックスレスでも、二人が感じている理由はしばしば食い違います。この認識のズレこそ、すれ違いの正体です。

誘われる側では「育児・家事の多忙」に続いて「性欲がなくなった」が上位。一方、誘う側では「パートナーが求めてこない」「求めても断られる」が上位に並びます。つまり、多忙で余裕を失っている状況を、もう一方が「拒絶」として受け取っているわけです。
つまずきやすいのは、この原因を「相手の愛情不足」と個人の問題に還元してしまうこと。相手を責める発想から、「一緒に環境を変える」発想へ切り替えることが、解消の分かれ道になります。
「一度断られたら、もう誘えない」怖さの正体
多くの人が口をそろえて言うのが、「断られるのが怖くて、もう誘えない」という声です。
相手が断った本当の理由は、体調不良や疲れ、加齢による性欲の変化など、愛情とは無関係なことがほとんど。それでも断られた側は「もう愛されていない」と受け取ってしまいやすいのです。背景にあるのは「恥」の感情で、一度傷つくと「もう誘わないほうが安全だ」と防衛的になり、お互いが誘わないまま時間だけが過ぎていきます。
知っておいてほしいのは、この「恥」や「遠慮」は、あなたが弱いから生じるのではないということ。「断られた=拒絶された」ではなく、「相手にもタイミングや事情がある」と一度捉え直すだけで、次の一歩がずっと軽くなります。
すれ違いをどう埋めるか
解消のカギは、相手が抱えているものを少しだけ想像し、そのうえで歩み寄ることです。
以下では便宜上「誘う側」「誘われる側」と呼びます。傾向として誘う側は男性、誘われにくい側は女性に多いものの、逆のケースも珍しくありません。ご自身の立場に置き換えて読んでください。
お互いが抱えているもの
| 項目 | 誘う側(男性に多い傾向) | 誘われる側(女性に多い傾向) |
|---|---|---|
| セックスレスの背景 | 拒絶される不安・愛情確認の欲求 | 育児や家事による慢性的な疲労 |
| セックスの位置づけ | 愛されている実感・安心 | 余裕がない中でのプレッシャー |
| 現実的な考え方 | 頻度の期待値を下げる | 無理のない触れ合いに応じる |
誘う側にとってセックスは、性欲の解消というより「まだ自分は愛されているか」を確かめる手段であることが少なくありません。だからこそ断られると、性的な不満以上に深い傷を負います。一方の誘われる側は、日々の疲労で心にも体にも余白が残っていない。「したくない」のは嫌いだからではないのです。
だから、誘う側は「余裕を奪われている相手の現実」を、誘われる側は「断りが想像以上に重く響いている相手の気持ち」を想像してみる。誘われる側が「今は無理」と伝えるときも、「あなたが嫌なわけじゃない」と一言添えるだけで、相手の傷つきは大きく変わります。
温度差そのものに折り合いをつける
理想は二人の足並みがそろっていることですが、難しいのは一方がしたくて、一方がしたくないケースです。ここで「する・しない」の勝ち負けを競うと、したい側は孤独を、したくない側はプレッシャーを溜め込んでしまいます。
現実的な着地点のイメージは、たとえば「セックスは月1回を目安に、それとは別に毎日おやすみのハグをする」といった形。回数そのものより、「触れ合いが続いている」という実感が孤独感を和らげます。
ただし外せない前提は、歩み寄りは本人が納得して選ぶものであり、我慢して応じることではないという点です。痛みや強い抵抗があるのに応じるのは、歩み寄りではなく我慢。その場合は後述の医療相談を優先してください。目指すのは、相手を優先して自分を殺すことではなく、二人で心地よくいられる着地点を一緒に探すことです。
「予定に入れる」という選択肢
誘う・断るのやり取りが一番つらい、という夫婦に検討してほしいのが、あらかじめ日を決めてしまう方法です。海外のカップルセラピーの現場でも「計画的セックス」として提案されることがあります。
利点は明確で、その都度「誘って断られる」という最も傷つきやすいプロセスをまるごと省けること。したい側は「次はいつ」という見通しが持てて不安が減り、したくない側は突然求められるプレッシャーから解放されます。
進め方はシンプルで、二人の生活リズムに合う頻度を話し合って決めます。ポイントは二つ。その日に必ずセックスする義務にしないこと(気分が乗らなければハグだけでも「予定を果たした」とみなす)。そしてキャンセルのルールも決めておくこと(別の日にしたいときは必ず代替日をセットで提案する)。これだけで断られた側の傷つきを最小限に抑えられます。
ただし「予定だと気持ちが乗らない」という人には逆効果です。合わなければやめればいい、くらいの気軽さで試すのがよいでしょう。
具体的な解消アプローチ
解消のきっかけ第1位は「話し合い」
実際に解消できた夫婦は何をしたのでしょうか。「解消したことがある」729人に聞いた結果、「パートナーと話し合ったから」が第1位(23.1%)でした。次いで「子育てが一段落したから」「良き理解者になるよう努めたから」と続きます。
興味深いのは、「子作りのため」に一度解消しても育児で再びレスに戻る夫婦が少なくない一方、話し合いを経て解消した夫婦は安定的に関係を保てている傾向が見えること。一時的なイベントに頼るより、気持ちのすれ違いを言葉にして共有することが、最も再現性の高い解消法なのです。
話し合いは「切り出し方」で変わる
とはいえ「話し合いが一番難しい」のが本音でしょう。子育て中のママ244人への調査(マイナビ子育て・2023年)では、レスについて話し合ったことが「ある」人はわずか16.8%でした。
しかも話し合った人の中でも結果は分かれます。うまくいった夫婦は「ドラマを一緒に見て自然に話せた」など、相手を責めず前向きな問いから入ったパターンが目立ちます。反対に「浮気しても文句言えないよ」「なぜしないの」と相手を追い詰めたケースは、多くが「歳だから仕方ない」で終わっています。
詰問は相手を守りに入らせ、共感は相手を開かせます。ポイントは「あなたはしてくれない」ではなく「最近もっと触れ合いたいと感じている」と、自分を主語にして伝えることです。
今日から始める7ステップ
いきなりセックスの再開を目指すと逆効果になりがちです。専門クリニックが推奨する「性のリハビリ」の考え方を参考に、心理的なハードルの低い順に整理しました。今の二人が無理なくいられる段階から始めてください。
「ありがとう」「お疲れさま」など、相手の存在を肯定する言葉が安心できる空気をつくります。
原因1位の「多忙」に直接効く一手。相手の負担を軽くすることが心の余裕につながります。
責める形を避けることで、話し合いが対立になりません。
寝る前の15分だけでもOK。「親」から「恋人」に戻る時間を意図的に設けます。
「隣りに座って一緒に映画を見る」「寝る前に5秒以上のハグ」のように具体的に決めると習慣化しやすく、オキシトシン(愛情ホルモン)の分泌も促されます。難しい場合は無理する必要はありません。
挿入にこだわらず、キスや愛撫も含めて「今の二人に合う触れ合い」を一緒に考えます。
土台があれば、セックスも自然な流れの中に戻りやすくなります。
このステップは一段ずつ確実に上る必要はなく、心地よければ複数を同時に進めても構いません。実際、5年ぶりに関係が戻ったという40代女性は、子どもが一人で寝られるようになった頃の夫の「これからは二人の時間も取っていこう」という一言がきっかけだったと語っています。土台が整えば、再開のきっかけは案外そうした何気ない一言だったりするのです。
体や心に原因があるとき
セックスレスの原因は、努力や気持ちの問題だけとは限りません。医学的な要因が背景にある場合、そこは我慢ではなく、専門家に相談すべき領域です。
男性側では、勃起不全(ED)や加齢による性欲低下が関係することがあり、泌尿器科や男性外来(メンズヘルス外来)で相談できます。女性側では、産後や更年期のホルモン変化による性交痛や腟の乾燥がセックスを「痛くてつらいもの」にしているケースがあり、婦人科や女性外来で大きく改善することが少なくありません。「したくない」の裏に痛みが隠れている場合、それは気持ちではなく治療で対処できる問題です。
見落とされやすいのが心の不調です。単なる疲労だと思っていたものが、実は産後うつや強いストレスによる不調であるケースも少なくありません。心がSOSを出しているときに性欲が湧かないのは当然のことで、この場合は心療内科や精神科が力になります。一部の薬の副作用で性欲が下がることもあるため、心当たりがあれば自己判断で服薬をやめず処方医に相談してください。
受診の目安は、スキンシップや話し合いを数ヶ月試しても改善せず、特に痛みや気分の落ち込みを伴う場合。早めに専門窓口を頼るほうが回り道になりません。二人だけで話し合うとこじれてしまう場合は、夫婦カウンセリングや性機能セラピーなど第三者を頼るのも立派な解決策です。外部の力を借りることは、関係を大切にしているからこその選択です。
よくある質問
Q. どのくらいの期間レスだと解消は難しい?
期間そのものより、二人が向き合う意思があるかどうかが重要です。10年以上のレスから解消した夫婦の事例も多くあります。期間の長さで諦める必要はありません。
Q. スキンシップすら拒否されてしまいます。どうすればいいでしょうか?
まずは触れることを目的にせず、「隣に座る」「一緒に食事する」など物理的な距離を縮めるところから。数週間試しても変化がなければ、無理に距離を詰めず、夫婦カウンセリングなど第三者の力を借りるほうが早いこともあります。
Q. セックスレスの原因は相手の浮気では?
本文のとおり、原因の大半は多忙や疲労、心身の不調です。相手を問い詰めるより、まず「最近すれ違いを感じていて寂しい」と自分の気持ちを伝えることから。不信感が強く生活に支障が出ている場合は、夫婦カウンセラーへの相談も選択肢です。
Q. 拒否され続けるのは自分に魅力がないから?
断りの理由は相手の疲労や心身の状態であることがほとんどで、あなたの魅力の問題ではありません。自分を責め続けると誘うこと自体が怖くなる悪循環に陥りがちです。まずは性的な場面以外で「ありがとう」を伝え合うなど、自己肯定感を保てる関わりから立て直していきましょう。
Q. お互い「今のままでいい」なら、無理に解消しなくてもいい?
はい。性の形は夫婦によって違って当然で、双方が納得しているなら問題ではありません。片方だけが我慢や不満を抱えている場合に、向き合う価値があります。
セックスレスは終わりではなく、多くの場合、二人の関係を再設計するタイミングです。
したい側の気持ちも、したくない側の現実も、どちらも本物。少しずつ歩み寄り、二人にとって心地よい着地点を一緒に探すこと。あなたの歩幅で、できることから始めてみてください。
参考文献
- 一般社団法人 日本性科学会「セックスレスについて(当学会におけるセックスレス・カップルの定義)」 https://sexology.jp/sexless/
- 浜松町第一クリニック(竹越昭彦院長監修)「セックスレスになった原因と解消方法を調査(2023年・20〜49歳男女3,000名)」 https://www.hama1-cl.jp/internet_research/sexless_survey_2023/eliminate_sexlessness.html
- マイナビ子育て「セックスレスについて夫婦で話し合い『できない』が圧倒的多数(2023年・ママ244人調査)」 https://kosodate.mynavi.jp/articles/32081
- 相模ゴム工業「ニッポンのセックス(セックスの回数・セックスレス調査)」 https://www.sagami-gomu.co.jp/project/nipponnosex/times_sex.html
- ヒロクリニック(畠山聡医師監修)「セックスレスを解消するための実践的アプローチ」 https://www.hiro-clinic.or.jp/ed/sexless-couple-guide/