いじめられる人の特徴には、一定の共通点があります。ただし、それが「いじめられる原因」とは限りません。これがこの記事の結論です。
「いじめられる人の特徴」を調べると、おとなしい、真面目すぎる、自己主張が弱い、といった共通点が並びます。それを見て、「自分(や子ども)に当てはまるかも」と不安になった方も多いでしょう。でも、当てはまったからといって、あなたが悪いわけではありません。
国立教育政策研究所の追跡調査では、6年間のうちに約9割の児童生徒が、被害・加害のどちらかの形でいじめに関わっていたことがわかっています。つまり、特定のタイプの人だけが狙われるわけではないのです。
この記事では、まず世間でよく言われる特徴を一覧で紹介し、それが本当に「原因」なのかをデータと専門家の知見から確かめ、今すぐできる対処法や相談窓口までを解説します。読み終える頃には、自分を責める必要がないと感じてもらえるはずです。
この記事のポイント
- 世間で「いじめられやすい」とされる特徴の一覧と、そう言われる理由
- 「特徴がある」ことと「本人が原因」であることは別問題だということ
- 追跡調査が示す「6年間で約9割がいじめに関わる」という事実
- 本人・保護者が今日からできる具体策と、無料の相談窓口
いじめられる人の特徴一覧【よく言われる共通点】
まずは、多くの方が知りたい「特徴の一覧」から見ていきましょう。学校でも職場でも繰り返し挙げられる特徴は、大きく分けると「反撃されにくい」「反応が出やすい」「集団で浮きやすい」の3タイプに整理できます。ここでは、性格・態度、コミュニケーション、環境・立場の3つに分けて紹介します。
先にお伝えしておくと、これらはあくまで「世間でそう言われている」特徴です。当てはまるからといって本人に非があるという意味ではありません。その理由は次の章でくわしく説明します。
性格・態度に関する特徴
- おとなしく、控えめ(反応が返ってきにくく、反撃されないと思われやすい)
- 断るのが苦手で、頼まれごとを引き受けてしまう(都合よく使われやすい)
- 自己主張が弱く、意見をあまり言わない(軽く見られやすい)
- 真面目で責任感が強い(からかいの対象にされやすい)
- 感受性が豊かで、傷つきやすい(反応が「面白い」と受け取られやすい)
コミュニケーションに関する特徴
- 感情が表に出やすい(過剰な反応が「からかいがい」と見なされやすい)
- 会話のテンポや話題が周りと合いにくい(「浮いている」と受け取られやすい)
- 自分の話が多い、または極端に少ない(集団の中で目立ちやすい)
環境・立場に関する特徴
- 集団の中で孤立している(守ってくれる人がいないと見なされやすい)
- 転校や異動で、あとから関係に入った(すでにあるグループに属していない)
- 周囲と違うところがある(見た目、持ち物、発達特性などが攻撃の口実にされやすい)
- 過去にいじめを受けたことがある(一度標的になると再発しやすい)
こうして並べてみると、共通しているのは「反撃してこなさそう」「反応が返ってきて面白い」「集団の中で違って見える」と、加害する側に見なされやすいという点です。いじめの心理を扱う研究でも、加害の動機として優越感や集団内での立場の獲得が挙げられ、「反応が得られる相手」が選ばれやすいと指摘されています。
大事なのは、これらが「その人の欠陥」ではないということです。従順さも、真面目さも、感受性の豊かさも、本来はどれも長所です。それがたまたま、ある環境で不利に働くことがあるだけなのです。では、なぜこうした特徴を「いじめられる原因」と考えてはいけないのでしょうか。ここからが本題です。
いじめられる人の特徴とは何か?「原因」と決めつけられない理由

「これだけ共通点があるなら、やっぱりいじめられる人の側に理由があるのでは」と感じる人もいるでしょう。自然な疑問です。けれども、ここには見落としやすい落とし穴があります。
「共通点がある」=「本人が原因」ではない
ある特徴といじめによく一緒に見られる関係(専門的には「相関」といいます)があったとしても、そこから「その特徴が原因だ」とすぐに言えるわけではありません。理由は、考えられる説明が一つではないからです。少なくとも、次の3つがありえます。
ひとつは、本人の特徴がいじめを引き起こしているという説明。もうひとつは、逆に、いじめを受けた結果としてその特徴が身についたという説明。そしてもうひとつが、本人の特徴と、まわりの環境が組み合わさったときにだけ標的にされるという説明です。特徴といじめが一緒に見られるという事実だけでは、このどれが当たっているのかは区別できません。「共通点がある=本人が原因」と決めつけるのは、この3つを一つに決めつけてしまう飛躍なのです。
では、実際にはどれが大きいのでしょうか。それを見分けるヒントが、「同じ特徴を持つ子でも、環境によっていじめられたりられなかったりする」という事実です。もし特徴そのものが原因なら、どのクラスに行っても同じように狙われるはずです。ところが実際には、受け入れる雰囲気のある集団に移ると標的にならなくなる、ということが起こります。あとで紹介する「いじめられる子の顔ぶれが入れ替わる」という調査結果も、これを裏づけています。
つまり、いじめられやすさの正体は「本人の特徴」だけではなく、「本人の特徴」と「まわりの環境」の組み合わせなのです。世間では「特徴があるからいじめられる」と思われがちですが、実際には、その特徴を受け入れない環境と重なったときに問題が起きる、と考えるほうが正確です。
「おとなしさ」は原因ではなく結果かもしれない
もうひとつ気をつけたいのが、「おとなしい」「自己主張が弱い」といった、いかにも原因に見える特徴です。これらは、いじめを受けた結果として強まることが少なくありません。ずっと攻撃を受け続ければ、誰だって自信をなくし、口数が減り、感情を出さなくなります。「特徴があったからいじめられた」のではなく、「いじめられたからその特徴が強まった」という逆の順番も、十分にありえるのです。表面的な特徴だけを見て「だから狙われた」と決めつけると、この可能性を見落としてしまいます。
「いじめられる側にも原因がある」は誤り
ここまでをまとめると、「特徴という共通点はあるが、それが原因とは限らない」というのがこの記事の結論です。だからこそ、「いじめられる側にも原因がある」という考え方(被害者責任論)は間違っています。かわいそうだから、という気持ちの問題ではありません。共通点があるという事実から「本人が原因だ」と結論づけること自体が、論理的に飛躍しているからです。
専門家も同じことを指摘しています。いじめ問題に長く取り組んできた人たちは、「いじめられる側にも原因がある」という考え方こそが、被害者を孤立させ、相談をためらわせ、解決を遠ざける根深い誤解だと警鐘を鳴らしています。
制度もこの立場に立っています。いじめ防止対策推進法や文部科学省の基準では、いじめかどうかは「いじめられた子の立場に立って」判断するものとされ、本人が苦痛を感じていることが中心に置かれています。昔は「一方的」「継続的」「深刻」といった条件がありましたが、それに当てはまらないとして被害が見過ごされた反省から、被害者本位の定義へと変わってきました。
だからこそ、思い当たる特徴があっても、「自分が悪いからいじめられるんだ」と責める必要はありません。それはあなたの欠点ではなく、まわりが気づいて配慮すべきサインなのです。

【データが証明】6年間で約9割が経験。誰もが標的になりうる

いじめられやすさが「本人の特徴」と「環境」の組み合わせで決まることを、はっきり示しているのが、国立教育政策研究所が長年続けてきた「いじめ追跡調査」です。ここが、この記事の核心となるデータです。
同じ子どもたちを小学4年生から中学3年生まで追いかけたこの調査によると、「仲間はずれ・無視・陰口」といった暴力を伴わないいじめについて、6年間のうちに約9割の児童生徒が、被害か加害のどちらかの形で関わっていました。期間を3年間に区切っても、被害・加害の経験率はともに7割前後にのぼります。いじめにいっさい関わらずに学校生活を終える子のほうが、むしろ少数派なのです。
さらに注目したいのが、いじめられた子の顔ぶれが、調査のたびに入れ替わっているという点です。同じ子がずっといじめられ続けているのではなく、時期や場面によって、誰もが被害者にも加害者にもなりうる。もし「いじめられる人」に生まれつきの決まった特徴があるなら、これほどの入れ替わりは説明がつきません。誰が標的になるかを決めているのは、変わらない個人の性質ではなく、そのときどきの集団の状況なのです。
いじめに遭うかどうかを大きく左右するのは、本人の性格だけではなく、その集団の空気や人間関係のあり方です。誰が被害に遭ってもおかしくないからこそ、「自分は大丈夫」と考えるのではなく、環境そのものに目を向けることが大切になります。
いじめられたときの対処法
ここまでを踏まえると、効果的な対処は「本人を変えること」だけではないとわかります。むしろ、まわりの環境や人間関係に働きかけるほうが効くことが多いのです。悩んでいる本人と、支える保護者、それぞれについて整理します。
本人ができること
いちばん大切なのは、一人で抱え込まないことです。真面目な人ほど「自分でなんとかしなきゃ」と背負い込みがちですが、いじめは本人の努力だけで解決できる問題ではありません。信頼できる大人や、あとで紹介する相談窓口に、「いつ・どこで・誰が・何をしたか」をメモにして伝えるだけでも、状況は動きやすくなります。日付を書いたメモや、メッセージのスクリーンショットは、相談するときの大事な手がかりになります。
「毅然とした態度が有効」と言われることもありますが、これは「強くなれ」「性格を変えろ」という意味ではありません。嫌なことに「やめて」と落ち着いて伝えるやり方であり、練習で身につくものです。性格を直す話ではなく、対応の選択肢を増やす話だと考えると、気持ちが楽になります。
保護者ができること
子どもがいじめを打ち明けてくれたとき、いちばん避けたいのは「あなたにも悪いところがあったんじゃない?」と返してしまうことです。前の章で見たとおり、これは理屈のうえでも間違いで、解決を遠ざけます。まずは、話してくれたこと自体をねぎらい、「あなたの味方だよ」と伝えることが出発点です。
そのうえで、家庭だけで抱え込まず、学校や外部の相談機関につなぎます。学校に相談するときは、感情的に責めるより、メモした事実を示しながら、担任個人ではなく「学校としての対応」を求めるのが効果的です。学校には、情報を組織で共有し、記録を残して見守る仕組みがあります。動きが鈍いと感じたら、教育委員会や下記の公的窓口など、学校の外の第三者を入れることも考えてください。保護者自身も無料で相談できます。

いじめられやすい特徴に関するよくある質問
Q. いじめられやすい性格は、直したほうがいいですか?
直す必要はありません。おとなしさや真面目さは欠点ではなく、本来は長所です。しかも、そうした特徴は原因ではなく、いじめを受けた結果として強まっただけかもしれません。変えるべきは性格ではなく、その特徴が標的にされてしまう環境のほうです。
Q. 大人や職場でも、いじめられやすい特徴はありますか?
基本的な構図は子どものいじめと同じです。「反撃してこなさそう」「集団の中で違って見える」と思われやすい人が狙われやすい傾向はありますが、これも本人の欠陥ではなく、ハラスメントを許してしまう職場の環境の問題です。職場のいじめは、社内の相談窓口や労働局の相談コーナーなどに相談できます。
Q. いじめる人にも特徴はありますか?
「自分を強く見せたい」「優越感を得たい」「集団の中で立場を確保したい」といった心理が、加害の背景にあると指摘されています。ただし、これも固定した性格というより、その場の空気に流されて誰もが加害側にまわりうる、というのが追跡調査の示すところです。だからこそ、個人を責めるより、いじめが起きにくい環境づくりが重要になります。
Q. 無視されるのは、いじめにあたりますか?
あたります。文部科学省の基準では、仲間はずれや集団での無視のように、直接の暴力を伴わない行為でも、本人が苦痛を感じていればいじめに含まれます。「叩かれていないから」「はっきり悪口を言われていないから」と我慢する必要はありません。
Q. 自分がいじめられているのか、はっきりしません。
判断の基準は「あなたが苦痛を感じているかどうか」です。周りが「そのくらい」と言っても関係ありません。少しでもつらいと感じるなら、それは相談していい状態です。まずは信頼できる人や、下記の窓口に話してみてください。
相談できる窓口
いじめは心と体に深刻な影響を与えることがあります。つらいときは、一人で抱え込まず、次の窓口を頼ってください。どちらも子ども本人はもちろん、保護者も無料で相談できます。
24時間子供SOSダイヤル(文部科学省)
0120-0-78310(全国どこからでも24時間・無料)
子どもの人権110番(法務省)
0120-007-110(いじめや虐待など人権問題全般・無料)
まとめ
最後に、この記事の要点を整理します。
いじめられる人の特徴に共通点はあるものの、それは「原因」とは限りません。同じ特徴でも環境によって結果が変わることから、いじめられやすさは「本人の特徴」と「まわりの環境」の組み合わせで決まると考えるのが正確です。国立教育政策研究所の追跡調査でも、いじめられる子の顔ぶれは絶えず入れ替わり、誰もが標的になりうることがわかっています。
だからこそ、思い当たる特徴があっても、自分を責める必要はありません。目を向けるべきは、その特徴が標的になってしまう環境のほうです。もし今つらい状況にあるなら、一人で抱え込まず、上記の窓口や信頼できる大人に声をかけてみてください。

参考文献
- 国立教育政策研究所 生徒指導・進路指導研究センター「いじめ追跡調査2016-2018」(3年間の被害経験率71%・加害経験率72%、6年間の分布傾向)https://www.nier.go.jp/shido/centerhp/2806sien/tsuiseki2016-2018.pdf /「いじめ追跡調査2019-2022 いじめQ&A」(経験者は調査ごとに入れ替わる)https://www.nier.go.jp/04_kenkyu_annai/centerhp/sien/tsuiseki2019-2022.pdf
- 文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」(令和7年10月公表。いじめ認知件数 約76万9千件、過去最多)https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422178_00006.htm
- 文部科学省 国立教育政策研究所「生徒指導リーフ11 いじめの『認知件数』」(認知件数の少なさは見逃しの可能性)/文部科学省「子供のSOSの相談窓口」・法務省「子どもの人権110番」https://www.nier.go.jp/shido/leaf/leaf11.pdf
