「Aが多い人ほどBも多い」。健康ニュースでも会社の売上分析でも、この形のデータはよく出てきます。ただ、それを「Aを増やせばBも増える」と読んでいいかどうかは、また別の話です。
ここでは相関関係と因果関係の違いを例を使って整理し、手元のデータが因果を示しているかどうかを自分で見分けるための考え方を紹介します。
相関関係と因果関係の違い
相関関係は、2つの量が一緒に変わる傾向のことです。「気温が高い月ほどアイスの売上が多い」のように、一方が大きいときにもう一方も大きい(または小さい)という観察結果を指し、どちらが原因かは問いません。
因果関係は、一方が原因となってもう一方が変わる関係です。「気温が上がるとアイスが売れる」のように向きがあり、原因の側を変えれば結果の側も変わることを意味します。因果関係があれば多くの場合は相関も現れますが、逆は成り立ちません。相関があっても、別の要因や偶然で説明できるうちは、因果関係があるとは言えません。
| 相関関係 | 因果関係 | |
|---|---|---|
| 意味 | 2つの量が一緒に変わる傾向 | 一方が原因でもう一方が変わる関係 |
| 向き | なし(AとBは対等) | あり(A→B) |
| 答える問い | AとBは一緒に動くか | Aを変えるとBは変わるか |
| 主な確かめ方 | 観察データ、散布図、相関係数 | 原因以外の条件を揃えた比較(ランダム化比較試験など) |
| 例 | アイスの売上と水難事故の件数 | 気温の上昇とアイスの売上 |
予測と施策で必要な根拠の違い
相関関係だけで足りるかどうかは、データを何に使うかで決まります。
「Aが大きいときはBも大きいだろう」と予測するだけなら、相関関係で十分役に立ちます。電力会社が気温の予報から電力需要を見積もるのはその例で、仕組みを問わなくても予測が当たれば目的は果たせます。極端に言えば、アイスの売上から水難事故が増える時期を見積もることも、予測としては成り立ちます。
「Aを増やしてBを増やそう」と何かを変える判断には、因果関係が要ります。アイスの販売をやめても、水難事故は減りません。広告費を増やす、生活習慣を変える、制度を導入するといった判断は、たいていこちら側に入ります。
相関係数の目安と読み方
相関の強さは相関係数で表し、−1から+1の値をとります。プラスなら正の相関、マイナスなら負の相関で、0に近いほど直線的な関係は弱くなります。福井県統計調査課の解説では、絶対値が0.7以上なら強い、0.5〜0.7で中程度、0.3〜0.5で弱い、0.3未満はほぼ無関係を目安にしています。区切り方は分野や資料によって多少違います。
係数を読むときに気をつけたいのは、次の3点です。
- 係数の大きさは因果関係の強さを表さない。次の節で説明する交絡による見かけの相関でも、係数が大きくなることは珍しくない
- 外れ値に弱い。福井県の資料の例では、外れ値を含めると0.68、除くと−0.23と、符号まで変わっている
- 直線的な関係しか測れない。U字型のように明らかな関係があっても、係数は0に近くなることがある
3点目は、因果関係があるのに相関が見えない場合があることも意味します。効果がU字型に現れるときや、同じ要因がプラスとマイナスの両方の経路で効いて打ち消し合うときです。相関がないことは、因果関係がない証拠にはなりません。
相関があっても因果関係とは限らない4つのパターン
相関関係が見つかったとき、因果関係以外でそれを説明できる道筋は大きく4つあります。因果関係を主張するには、これらをひとつずつ排除していく必要があります。
| パターン | 何が起きているか | 例 | 見抜くための問い |
|---|---|---|---|
| 交絡(第三の要因) | 共通の原因がAとBの両方を動かしている | アイスの売上と水難事故(共通の原因は気温) | 両方に影響しそうな要因はないか |
| 逆の因果 | 結果だと思っていたBが、実はAの原因になっている | 警察官が多い地域ほど犯罪が多い(犯罪が多い地域に警察官を配置する) | 時間の順序は合っているか。逆向きの説明は成り立たないか |
| 選択バイアス | データの集め方が偏り、見かけの関係が生まれている | 成功した企業だけを調べて共通点を探す | 誰が対象で、誰がデータから抜けているか |
| 偶然 | たまたま数値がそろった | 多数の指標を総当たりで比べ、相関が高く出た組み合わせだけを報告する | データ数は十分か。別の時期や集団でも再現するか |
矢印=原因から結果への向き 青い点線=見かけの関連
思い込み:警察官が増えると犯罪が増える
実際には無関係な指標を100組検定すると、有意水準5%では平均約5組が偶然「有意」になる
交絡でとくに見落としやすいのは、時間の経過そのものが共通の原因になっているケースです。年ごとのデータで、どちらも年々増えている2つの量を並べると、互いに無関係でも強い相関が出ます。
逆の因果は、両方向の関係が同時に存在することもあります。「運動している人ほど健康だ」というデータには、運動が健康を高める向きと、体調の良い人ほど運動を続けられる向きの両方が混ざっている可能性があります。
偶然は、調べる組み合わせが多いほど起こりやすくなります。統計でよく使う有意水準5%で判定すると、本当は関係のない組み合わせでも、およそ20回に1回は「有意な相関あり」と判定されます。100組を総当たりすれば、関係がなくても5組前後は有意に見える計算です。
実際には、これらがいくつか重なっていることもあります。次の研究がそうでした。
実例:子ども部屋の照明と近視
1999年、科学誌Natureに「2歳までに明かりをつけたまま寝ていた子どもは、のちに近視になりやすい」という研究が掲載されました。部屋の照明をつけたまま寝ていた子どもは、約半数がのちに近視になっていたと報告され、各国で報道されました。
翌2000年、オハイオ州立大学などの研究チームが1,220人の子どもを調べたところ、照明と近視の間に関連は見られませんでした。暗い部屋で寝ていた子ども(417人)の20%、常夜灯をつけていた子ども(758人)の17%、明るい部屋で寝ていた子ども(45人)の22%が近視になっており、割合はほぼ同じです。同じ号のNatureには、別の研究グループによる関連を否定する報告も載りました。
代わりに強く関連していたのは、親の近視です。近視の親ほど子ども部屋に常夜灯を使う傾向があり、研究者は親自身の視力の悪さが理由ではないかと述べています。1999年の研究は親の近視を考慮しておらず、対象は専門クリニックを受診した、年齢の割に近視の割合が高い子どもたちでした。
親の近視という共通の原因(交絡)に、対象の偏り(選択バイアス)が重なって、照明と近視の間に見かけの関係が生まれたと考えられています。
因果関係を確かめる方法
因果関係があると言うには、一般に次の3つの条件を満たす必要があります。
- 原因が結果より先に起きている
- 原因が変わると結果も変わる(相関がある)
- 交絡・逆の因果・選択バイアス・偶然といった、ほかの説明を排除できる
1と2はデータを見れば比較的確かめやすく、難しいのは3です。3を満たす基本的な方法は、原因の有無以外の条件が揃った2つのグループを比べることです。原因にあたる施策や行動を受けたグループ(介入群)と受けていないグループ(対照群)に元々の違いがなければ、結果の差は原因によるものと考えられます。
根拠の強さで見る比較の方法
条件を揃える方法はいくつかあり、根拠としての強さに差があります。経済産業研究所(RIETI)の解説をもとに、主な方法を整理すると次のとおりです。
| 方法 | 考え方 | 特徴と注意点 |
|---|---|---|
| ランダム化比較試験(RCT) | 対象をくじ引きのように無作為に2群に分け、片方だけに介入する | 最も強い根拠になる。群分けを偶然に任せるため両群の属性がほぼ揃う。ただし結果を別の集団にそのまま当てはめられるとは限らない |
| 回帰不連続デザイン | 「BMI25以上なら保健指導の対象」のような基準の、すぐ上とすぐ下を比べる | 基準の近くでは両群がほぼ同じとみなせる。分かるのは基準付近の効果だけ |
| 差の差分析 | 施策の前後の変化を、施策を受けた群と受けていない群で比べる | 施策がなければ両群は同じように推移した、という前提が必要 |
| 傾向スコアマッチング | 年齢や経歴などが似た人同士を組み合わせて比べる | やる気のようにデータにない要因は揃えられず、結果が大きくずれることがある |
| 単純比較・前後比較・対象者だけの調査 | 受けた人と受けなかった人をそのまま比べる。受けた人の前後や満足度だけを見る | 根拠として弱い。元々の違いや時間の経過による変化と区別できない |
中間の3つは、前提が満たされているかどうかで信頼性が大きく変わります。RIETIの解説では、対象者だけの事後調査や前後比較、単純比較は根拠のレベルが低く、政策判断の基礎情報にするのは推奨できないとしています。広告でよく見る「使った人の多くが効果を実感」といった体験談やアンケートは、この表のいちばん下の行にあたります。
喫煙のように、人に割り当てることが倫理的に許されない要因ではRCTを行えません。その場合は、複数の観察研究が同じ方向の結果を示しているか、量が増えるほど影響が大きくなるか、仕組みとして説明できるかといった材料を積み重ねて、因果関係を判断します。
データで相関を見たときの確認手順
ニュースやレポートで相関を示すデータを見かけたら、次の5点を順に確認します。
- 主張の言葉を確認する。元の調査が示しているのは「関連」「傾向」なのに、見出しでは「〜すると〜になる」「効果」に言い換えられていることがよくあります。元の調査や論文の表現を見ます。
- 共通の原因を考える。年齢、所得、家庭環境、季節、時間の経過など、両方に影響しそうな要因を挙げ、それが分析で考慮されているかを確かめます。
- 逆向きの説明を考える。結果だと思っている側が原因になっていないか、時間の順序は合っているかを確認します。
- データの集め方を確認する。対象は誰で、誰が含まれていないか。特定の病院の患者だけ、アンケートに答えた人だけ、成功例だけといった偏りがないかを見ます。
- 比較の方法と再現性を確認する。無作為に分けた比較か、単純比較か。データ数は十分か、別の調査でも同じ結果が出ているかを確かめます。
朝食と学力のデータで確かめる
農林水産省の食育白書によると、文部科学省の2024年度全国学力・学習状況調査では、朝食を毎日食べている小・中学生と全く食べていない小・中学生の間に、各教科の平均正答率で15ポイント前後の差がありました。よく引き合いに出されるデータなので、上の手順で読んでみます。
まず言葉です。白書が述べているのは平均正答率に差があるという事実で、朝食を食べれば成績が上がるとは書いていません。
データの集め方と再現性には、大きな問題は見当たりません。対象学年のほぼ全員が受ける調査で、複数年度にわたって同じような差が出ています。偶然や対象の偏りでは説明しにくいところです。
引っかかるのは共通の原因です。毎朝決まった時刻に起きる、生活リズムに気を配る大人が家にいる、家庭に経済的なゆとりがある。こうした条件は、朝食にも学力にも関わっていそうです。朝食を食べる子と食べない子をそのまま比べただけでは、これらの影響と区別がつきません。学習意欲の高い子ほど早起きして朝食をとる、という逆向きの経路もありえます。
このデータだけでは、「朝食を食べさせれば正答率が15ポイント上がる」とまでは言えません。朝食をとっていなかった子に朝食をとってもらい、そうでない子と成績の変化を比べる研究があれば、因果関係の根拠になります。朝食をとること自体に意味がない、という話ではありません。
相関を頼りに動いてよいとき
どこまで因果の証拠を求めるかは、その行動にかかるお金や手間、リスクの大きさで決めるのが現実的です。
費用がほとんどかからず害もない行動なら、因果関係が確かでなくても試してみる価値はあります。効果がなければやめればよいからです。お金や時間を大きく使う、健康上のリスクがある、元に戻しにくいといった判断では、ランダム化比較試験など因果関係を示す根拠を確認してから決めます。
ビジネスでよくあるのが、「広告を見た人の購入率が高い」というデータだけで広告予算を増やすケースです。ネット広告は、もともと買う気のありそうな人に優先して表示される仕組みなので、見た人の購入率が高いのは当然とも言えます。広告そのものの効果を知りたいなら、表示する人としない人を無作為に分けて購入率を比べます。