「このままの仕事を続けて大丈夫だろうか」「老後のお金は足りるのだろうか」「親のこと、自分の健康、この先の生活はどうなるのだろう」。
将来について考え始めると、一つの心配から別の心配へ広がり、最後には「何が不安なのか自分でもよく分からない」という状態になることがあります。
そんなときは、何が不安なのかを書き出し、その中から自分で変えられる部分を見つけます。自分では決められないことについては、できる範囲の備えをしたうえで、いったん保留にします。
たとえば、10年後に今の会社がどうなっているかは分かりません。しかし、自分の経験がほかの会社でも通用するか調べることや、収入が途切れた場合に備えておくことはできます。
「将来」という大きな問題をそのまま考えるより、今の自分が手をつけられるところまで小さくする。そこから始めると、漠然とした不安にも少し輪郭が見えてきます。
将来不安は大きな塊のまま考えない
「将来が不安」という言葉の中には、性質の違う心配がいくつも入っています。
お金、仕事、健康、親の介護、結婚、子ども、自分の老後。「このままでいいのか」という生き方そのものへの迷いが重なっている場合もあります。
それらを一度に考えると、どこから手をつければよいのか分からなくなります。
たとえば「仕事が不安」という一言にも、
- 会社の業績が悪く、将来が心配
- 給与が今後も上がらなそう
- 今の仕事を続けてもスキルが身につかない
- 辞めたいが、次の仕事が見つかるか分からない
といった別々の問題があります。
「会社が10年後も存続するか」と「今の経験で転職できるか」では、今できることが違います。
厚生労働省の「こころの耳」で公開されている問題解決の資料でも、一見すると解決が難しい状況について、問題を整理して細かく分け、取り組みやすいものから対処する方法が示されています。
将来全体ではなく、一つの問題まで小さくすると、初めて具体的な手段を考えられます。
不安を書き出して輪郭をつける
頭の中だけで考えていると、「老後が不安」「仕事が不安」というところから先へ進まないことがあります。
そこで、何が起きるのが心配なのかを書きます。
「お金が不安」なら、
- 仕事を辞めたら何か月生活できるのか分からない
- 住宅ローンが何歳まで残るのか把握していない
- 老後にもらえる年金額を知らない
といった具合です。
「健康が不安」でも、「将来病気になったら怖い」と「最近気になる症状がある」では話が違います。後者なら、現在の状態を確認するという具体的な行動につながります。
書く場所は紙でなくても構いません。厚生労働省も、もやもやした気持ちを言葉にして書くことで、悩みと距離を取り、客観的に見やすくなったり、別の選択肢に気づいたりすることがあると案内しています。スマートフォンやパソコンへの入力でもよいとされています。
長い文章を書く必要もありません。
仕事:会社が危ないことより、辞めたあとに仕事があるか心配
お金:30年後より、まず今の貯金が少ないことが心配
親:介護そのものより、何も話していないことが気になる
このくらい具体的になると、不安だったものの中に「確認すれば分かること」や「今日から動けること」が混ざっているのが見えてきます。
自分で変えられる部分を切り出す
書き出した不安を見たら、その問題の中で自分の行動によって動かせる部分を探します。
たとえば、
今の会社が10年後にもあるか不安
という心配があります。
会社の将来は自分では決められません。それでも、
- 今の経験で応募できる求人を調べる
- ほかの会社でも使えるスキルを身につける
- 収入が途切れた場合に何か月生活できるか確認する
ことはできます。
老後についても、将来の物価、税制、社会保障制度がどう変わるかまでは分かりません。今の生活費、貯蓄額、住宅費、現在の制度で見込まれる年金額なら確認できます。
考え方は次のようになります。
| 不安 | 自分では決められないこと | 自分で動かせる部分 |
|---|---|---|
| 会社の将来 | 景気、会社の経営判断 | 求人確認、スキル、貯蓄 |
| 老後のお金 | 将来の物価や制度 | 生活費、貯蓄、年金見込額 |
| 健康 | 将来どんな病気になるか | 健診、受診、生活習慣 |
| 親の介護 | いつ介護が必要になるか | 希望を聞く、制度や費用を調べる |
自分で動かせるのは、結果そのものとは限りません。
転職活動をしても希望どおりの会社が見つかるとは限りませんが、求人を調べる、条件を比較する、必要な経験を知るところまでは自分で進められます。
分からないことは一度調べる
不安の原因が、将来の不確実さより「現在の状況を知らないこと」にある場合もあります。
年金額を知らない。自分の職種の給与相場を知らない。介護が必要になった場合にどんな制度を利用できるのか知らない。
こうした問題は、情報を一つ確認するだけで見え方が変わります。
老後なら、日本年金機構の「ねんきんネット」で将来の老齢年金の見込額を試算できます。
仕事なら、
「転職について調べる」
と広く検索するより、
「自分の経験で応募できる求人があるか」
を実際の求人で確認するほうが判断材料になります。
目的を決めずに「老後に必要なお金」「AIでなくなる仕事」「40代で後悔すること」と検索を続けると、新しい不安はいくらでも増えます。
「これが分かれば今日は終わり」という地点を決めてから調べると、情報収集にも区切りをつけやすくなります。
最初の行動は小さくする
問題が見えたあとに「老後資金を準備する」「転職する」と考えると、再び課題が大きくなります。
最初は、
「直近3か月の生活費を見る」
「ねんきんネットを開く」
「自分と同じ職種の求人を5件見る」
くらいで十分です。
厚生労働省の問題解決に関する資料でも、問題を整理したあとに対策を考え、実行可能性などを検討しながら取り組む方法が示されています。
一つ確認した結果、次に必要なことが分かる場合もあります。数年先までの計画を最初から作るより、その都度次の一手を決めるほうが進みやすい問題もあります。
変えられないことは備えて保留する
自分で動かせる部分を探しても、答えの出ないことは残ります。
今の会社が20年後にも存在するか。将来大きな病気をするか。結婚生活がずっとうまくいくか。子どもがどんな人生を歩むか。
これらを今日確かめる方法はありません。
会社の将来が分からないなら、会社の外でも使える経験を持つ。将来の収入が分からないなら、急な変化に耐えられる余裕を少し作る。健康の先行きが分からないなら、現在の状態を確認する。
そこまでやったあとは、残った部分を保留にします。
ここでいう保留は、今考えても新しい答えが出ない問題に、今日これ以上の時間を使わないという区切りです。
将来には不確実な部分が残ります。100%安心できるところまで調べようとすれば、確認することは際限なく増えていきます。
「まだ準備が足りない」のか、「答えのない問いを考え続けている」のか。この違いを見分けることが、不安に時間を奪われすぎないための境目になります。
将来を一度で決めない
将来が不安なときには、「今ここで正しい選択をしなければ」と考えやすくなります。
仕事を続けるか辞めるか。結婚するか。家を買うか。この街に住み続けるか。
大きな選択でも、最終回答をすぐに出さずに進められる場合があります。
転職なら、退職する前に3か月だけ求人を見る。家を買うか迷っているなら、先に家計を確認し、1年間でどのくらい資金を増やせるかを見る。
「どちらを選ぶか」がまだ決められないなら、次にどこまで進むかを決めます。判断材料が増えれば、その時点でもう一度考え直すことができます。
将来のことが頭から離れなくなったときも同じです。気になっていることを書き出し、確認することを一つ決め、今日できることを一つ済ませたら、その日はそこで終わりにします。
すべてを今決めなくても、次に進むための判断はできるのです。
参考資料