教科書や参考書を何度も読み返しているのに、数日後には内容を忘れてしまう。そんなときに取り入れたい勉強法の一つが、アクティブリコールです。
手元の教材で始められる基本手順から、白紙勉強法や暗記カード、問題集を使った実践方法、復習のタイミングまで紹介します。うまく思い出せない場合の対処法も確認していきましょう。
アクティブリコールの基本手順
アクティブリコール(Active Recall)とは、学んだ内容を何も見ずに自分の記憶から思い出す勉強法です。認知心理学では「想起練習」や「検索練習」とも呼ばれます。
例えば、教科書で光合成について学んだあと、ページを閉じて「光合成に必要なものは何か」「光合成によって何が作られるか」と自分に質問します。
覚えた内容を思い出してから答え合わせをすることで、理解できている部分と、まだ記憶があいまいな部分を確認できます。
基本的な手順は、次の3ステップです。
- 教材の短い範囲を読む
教科書の1見出しや1ページなど、数分で学べる範囲を決めます。内容を理解しながら読み、重要な用語や仕組みを確認します。 - 教材を閉じて思い出す
覚えた内容を声に出す、紙に書く、自分で質問に答えるなどして、記憶だけを頼りに思い出します。 - 答え合わせをする
教材を開き、正しく思い出せた部分と、抜けていた部分を確認します。間違えた内容は読み直し、再び教材を閉じて答えてみます。
最初は、10分程度の短い練習から始めると取り組みやすいでしょう。
例えば、4分間で教科書を読み、2分間で内容を思い出し、2分間で答え合わせをします。残りの2分間で、間違えた内容をもう一度思い出してみます。
時間配分はあくまで一例です。難しい内容なら読む時間を増やし、すでに理解している内容なら思い出す練習を中心に進めます。
勉強内容に合わせた4つの実践方法
アクティブリコールには、教材を閉じて思い出す方法のほか、問題集や暗記カード、白紙を使った方法があります。
どれから始めるか迷ったら、普段の教材をそのまま使える方法がおすすめです。新しいノートやカードを用意する手間を省き、思い出す練習に時間を使えます。
| 方法 | 向いている学習 | 準備の手間 |
|---|---|---|
| テキストを閉じて思い出す | 教科書・参考書・実務書の学習 | ほぼなし |
| 問題集や過去問を解く | 受験・資格試験・計算問題 | ほぼなし |
| 暗記カードを使う | 英単語・専門用語・年号 | 少ない〜多い |
| 白紙に書き出す | 歴史の流れ・仕組み・論述対策 | 少ない |
テキストを閉じて思い出す
教科書や参考書を読んでいる途中で、区切りのよいところまで進んだら本を閉じます。
「今読んだ内容を説明するとしたら、何を話すか」と考え、覚えていることを自分の言葉にしてみましょう。
例えば、日本史の江戸時代について学んでいるなら、「幕藩体制とはどのような仕組みか」「参勤交代にはどのような目的があったか」といった質問が考えられます。
用語の名前だけで終わらず、その意味や背景も説明できるか確認すると、理解の不足に気づきやすくなります。
1章を読み終えるまで待つと、最初に読んだ内容を思い出しにくくなることがあります。慣れないうちは1見出し程度で区切り、少しずつ範囲を広げるとよいでしょう。
問題集や過去問を解く
資格試験や受験勉強で、すでに問題集を持っているなら、その問題を活用する方法がおすすめです。
問題を読んだら、解説や正解を確認する前に、自力で答えを考えます。答え合わせでは、正解したかどうかに加え、その理由を説明できるかも確認します。
例えば、法律の四択問題なら、正解の選択肢を選んだあと、ほかの選択肢が誤っている理由も考えてみます。
選択肢を見ただけで正解を思い出してしまう場合は、問題文を読んだ段階で答えを予想してから選択肢を見る方法もあります。
数学や物理では、公式を思い出したあとに、実際の問題で使ってみましょう。公式を覚えていても、どの場面で使うのか判断できなければ、解答にはつながりません。
初めて見る問題で解き方がわからない場合は、例題や解説を確認してから、何も見ずに解き直します。慣れてきたら、数字や条件の異なる類題にも挑戦してください。
暗記カードを使う
英単語や歴史の年号、専門用語など、短い質問で答えを確認できる内容には暗記カードが便利です。
カードの表に質問、裏に答えを書き、表だけを見て答えを思い出します。
| 表の質問 | 裏の答え |
|---|---|
| analyzeの意味は? | 分析する |
| 水の化学式は? | H₂O |
| 日本国憲法の施行日は? | 1947年5月3日 |
カードの答えを見て「知っていた」と感じても、実際に答えられたかどうかを基準にしてください。
英単語なら、日本語の意味を答える練習に加えて、日本語から英語を思い出したり、その単語を使った英文を作ったりする練習もできます。
覚える項目が多い場合は、Ankiのような復習管理機能のあるアプリも選択肢になります。ただし、カードを作る作業に時間がかかるなら、市販の単語帳や問題集をそのまま利用するとよいでしょう。
白紙に書き出す
白紙勉強法は、学んだ内容を何も見ずに紙へ書き出す方法です。ブランクシート法と呼ばれることもあります。
例えば、明治維新について学習したら、白紙に主な出来事を書き出し、年代順に並べてみます。改革の目的や出来事同士のつながりも書けると、理解の深さを確認できます。
文章をきれいにまとめることに時間をかけず、思い出した内容を箇条書きや簡単な図で表してみましょう。
書き終えたら教科書と照らし合わせ、抜けていた内容を別の色で書き加えます。
初めから白紙に何も書けない場合は、教科書の小見出しだけを書いた紙を用意し、それぞれの内容を思い出す方法から始めると取り組みやすくなります。
白紙勉強法は、複数の知識を関連づけて覚えたいときや、学んだ内容をまとまった形で説明する練習に向いています。
思い出せないときの対処法
アクティブリコールを始めると、教材を閉じた途端に何も思い出せなくなることがあります。
まず確認したいのは、学習する範囲の大きさと、内容の理解度です。
教科書を数ページ読んでもほとんど思い出せない場合は、1段落や一つの用語まで範囲を小さくします。「何を覚えているか」という漠然とした問いが難しければ、「この用語の意味は?」「なぜこの出来事が起きた?」と具体的な質問を用意してみましょう。
初めて学ぶ分野で、用語の意味や仕組みがわからない場合は、教材の説明や例題に戻って理解を深めます。
答えを思い出そうとする時間も調整できます。
短い一問一答なら、最初は10〜30秒程度考え、手がかりが浮かばなければ答えを確認する方法が考えられます。これは実践しやすくするための目安で、科学的に決まった最適時間ではありません。
仕組みの説明や計算問題では、もう少し長く考える場合もあります。考えている途中で新しい手がかりが浮かんでいるなら、そのまま続けてみましょう。
答えを確認したら、再び隠して自力で答えます。見た直後に言えるようになった内容も、翌日などにもう一度確認すると、記憶が残っているか確かめられます。
また、頭の中で「だいたい覚えている」と思っていても、いざ説明しようとすると言葉が出てこないことがあります。
短い用語なら実際に答えを声に出し、複雑な内容ならキーワードを書き出すなど、答え合わせができる形にすると、覚えている範囲を判断しやすくなります。
復習のタイミングと間隔
アクティブリコールは、日を空けて繰り返すことで、長期的な記憶の定着を促せます。
このように学習の間隔を空ける方法を「分散学習」と呼びます。
初めて取り入れる場合は、次のようなスケジュールから試してみてください。
| タイミング | 復習の進め方 |
|---|---|
| 学習当日 | 教材を閉じて内容を思い出し、答え合わせをする |
| 翌日 | 前日に学んだ内容をもう一度思い出す |
| 3日後 | 同じ範囲を確認し、間違えた部分を復習する |
| 1週間後 | 覚えた内容が残っているか確認する |
| 2週間後以降 | 必要に応じて再テストし、試験まで復習を続ける |
これは実践例です。研究によって分散学習の有効性は支持されていますが、すべての教材や学習者に共通する最適な復習日程が決まっているわけではありません。
実際の復習では、答えられたかどうかに応じて次のタイミングを調整すると管理しやすくなります。
- すぐに正しく答えられた内容は、次の復習まで少し間隔を空ける
- 時間をかけて思い出せた内容は、数日以内に再確認する
- 間違えた内容は、学び直したあとに再テストし、翌日も確認する
例えば、英単語20個のうち15個を正解できたなら、間違えた5個を重点的に復習します。正解した15個も、数日後にもう一度出題します。
答えられるようになった項目を復習対象から完全に外してしまうと、時間が経って再び忘れることがあります。安定して正解できる内容から復習間隔を長くしていくと、限られた時間を苦手な項目に使いやすくなります。
試験が近い場合は、復習の日程を試験日から逆算して調整してください。直前期には、個別の暗記に加えて、過去問などで広い範囲をまとめて確認する時間も取るとよいでしょう。
アクティブリコールの効果と科学的根拠
アクティブリコールの効果は、認知心理学の研究で繰り返し確認されています。
代表的なのが、RoedigerとKarpickeが2006年に発表した研究です。大学生に科学的な文章を学んでもらい、繰り返し読む方法と、読んだ内容を思い出す方法を比較しました。
実験の一つでは、次のような結果が得られています。
| 学習方法 | 5分後の再生率 | 1週間後の再生率 |
|---|---|---|
| 文章を4回読む | 約83% | 約40% |
| 文章を1回読み、3回思い出す | 約71% | 約61% |
再生率は、文章に含まれる内容をどの程度思い出せたかを示す数値です。
学習から5分後は繰り返し読む方法の成績が高かったものの、1週間後には思い出す練習を行ったグループの方が高い成績を残しました。
このように、テストで知識を思い出す行為が、その後の記憶保持を促す現象を「テスト効果」と呼びます。
また、Dunloskyらが2013年に発表した研究レビューでは、10種類の学習方法を比較し、練習テストと分散学習を有用性の高い方法として評価しています。
ただし、研究で示された効果の大きさは、教材や学習条件によって異なります。アクティブリコールだけで、すべての知識や技能を身につけられるわけでもありません。
新しい内容を学ぶときは、説明を読んで意味を理解する時間が必要です。数学やプログラミングなどでは、覚えた知識を実際の問題や課題に使う練習も組み合わせます。
普段の勉強であれば、まず教科書を1見出し読んだあと、閉じて内容を説明するところから試してみてください。翌日にも同じ内容を思い出せるか確認すると、自分にとって復習が必要な部分を見つけやすくなります。
参考文献